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バイナンスは、米国での取引所Binance USの開設を今年2019年の年末までに予定していますが、11月を前にして開始されると予測されています。
8月16日にcheddar社が行ったインタビューによると、まだ多くのことが流動的であることを認めつつも、あと1、2か月以内には開始されるだろうと、CEOのChangpeng Zhao氏は(通称CZ)答えています。
CZは、「米国は歴史的に見ても、金融技術に関して非常に明確な規制をしてきた」と発言し、現在の法規制分野での不確実性を不安視しながらも、業界には早く参入したほうが得だろうと期待を述べました。
「米国は常に非常に重要な市場です。世界的にどんなビジネスにとっても最大の市場で、もちろん、暗号通貨のビジネスにとってもそうです。私たちは完全に準拠したいと考えています。以前はその経験がないと感じていましたが、今はパートナーがいます。ですからこの機会に市場を探索したいと思います。」
今回はバイナンスのアメリカ進出を支えるパートナー企業について迫ります。
米法規制に完全準拠のプラットフォーム BAMと提携
今年6月にバイナンスは、米国に拠点を置く個人および法人顧客がBinance.comにアクセスできないように制限すると発表しました。
このアクセス制限はアナウンスから90日後の9月12日付けで施行するというものでしたが、発表をした6月14日時点で、米国在住の顧客からのトラフィックは2018年当初の30%から15%に減少しました。
また同日に、バイナンスは米国居住の暗号通貨トレーダーに向けて取引所を開設する準備を始めたと発表しました。
その発表の中で、あまり知られていないBAM Trading Servicesという会社(以下BAM)とのパートナーシップを明らかにしました。
バイナンスのパートナー BAMとは
CZは、米国拠点の新プラットフォームはBAM主導で運用されることを示し、規制に完全遵守した米国市場を提供すると発言しています。
バイナンスのウェブサイトでは、BAM代表の言葉が掲載されています。
「バイナンスの米国展開を開始すべくパートナーとなり、両社が連携して一流のセキュリティとテクノロジーを活用できて光栄に思います。」
(出典 https://twitter.com/bam_trading?lang=en)
上記画像はBAMのTwitterアカウントです。
Binance USと同じ4月に登録されていますが、発表があった6月14日まではツイートは開始されていません。
また、Twitterアカウントはあるものの、会社のWebサイトへのリンクは貼られていないようです。
このことからも、BAMについての情報はまだあまり多くありません。
しかし、バイナンスとのパートナーシップの発表は、米国財務省の金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)がBAMを金融サービス事業と認定した1日後のことでした。法人化は今年の2月にBAMはデラウェア州でされたばかりです。
BAMのCEOは元リップル幹部
7月2日、リップルの元幹部Catherine Coleyは、Binance USの運営会社であるBAMのCEOに任命されました。
公式ブログのなかで、バイナンスと協力し、米国でブロックチェーンエコシステムの可能性を広げていくことに意欲を見せているようです。
(出典 https://medium.com/@BAM_Trading/binance-us-operator-bam-announces-former-ripple-executive-as-ceo-add491fb513)
Binance US 通貨の上場基準にも法規制への配慮
8月10日、バイナンスはどの暗号資産を利用するかを決定する為、「デジタル資産リスク評価フレームワーク」を作ったことを発表しました。
上場見込みの暗号通貨については、Binance USが米国のマネーロンダリング防止法(AML)、テロ資金調達防止法(CFT)および証券法を遵守できる通貨かどうかが具体的な基準です。
それ以外には、ロードマップの実現性、プロジェクトの熱意、トランザクションのセキュリティについても評価されていくようです。
プロジェクトをサポートするコミュニティと開発者の間で有意義な相互作用が生まれるか、コミュニケーションが機能しているかどうかも上場のための調査対象です。
その開発コアチームが「本当の問題を解決し世界をよりよい場所にする」明確な戦略を持っているかどうかが判断されるとのことです。
それだけではなく、市場を支える需要と供給のダイナミクスが「合理的に公正でありBinance USの基準を満たすことが出来るかどうか」が考慮されます。
上場候補コインは現在30種
バイナンスのメインプラットフォームに上場されているおよそ160種の暗号通貨のうち、Binance USのプラットフォームに上場するコインを約30種検討していると発表しました。
その内訳は、以下の時価総額上位8位が含まれています。
- ・ビットコイン(BTC)
- ・イーサリアム(ETH)
- ・リップル(XRP)
- ・ビットコインキャッシュ(BCHABC)
- ・ライトコイン(LTC)
- ・バイナンスコイン(BNB)
- ・テザー(USDT)
- ・イオス(EOS)
今回の候補の半分は、時価総額で20位までの暗号資産です。11位のルーメン(XLM)、13位のカルダノ(ADA)、15位のリンク、16位のダッシュ、18位のネオ、19位のイーサリアム・クラシック(ETC)および20位のアイオータ(MIOTA)などが入っています。
(出典 https://medium.com/@BAM_Trading/binance-us-operator-bam-announces-former-ripple-executive-as-ceo-add491fb513)
その他、ステーブルコインについては、USDコイン(USDC)、TrueUSD(TUSD)やパクソス・スタンダード・トークン(PAX)も入る可能性があるようです。
複雑な法規制が暗号資産取引の妨げに
米国では暗号通貨は通貨というよりむしろ商品として規制されています。そのため、商業用デジタル通貨取引は米国商品先物取引委員会(CFTC)の規制管轄下にあります。
しかし、取引所が証券を含むとみなされる場合は、証券取引委員会(SEC)に登録する必要があります。
暗号通貨の販売は通常、暗号資産が証券とみなされる場合、あるいは、その取引が金融事業のビジネスである場合にのみ規制されます。暗号通貨デリバティブ商品の販売は、CFTCによって監督されます。
米国を拠点とする暗号取引所は、AML/CFTに加えて、米国内歳入庁の税法やFinCENによって義務付けられる透明性要件にも準拠しなければなりません。また米国で事業をしようとする暗号会社も、連邦取引委員会の規制を受けます。
州レベルでの暗号通貨法も存在
さらに、カリフォルニア州、ネバダ州、アリゾナ州、コロラド州、テキサス州、ワイオミング州、イリノイ州、デラウェア州やニューヨーク州といった9つの州が、州レベルでの暗号通貨法も作りました。
それにより、米国で事業をしようという暗号通貨取引所にとって規制上の義務をさらに追加しています。
このような米国の規制ガイドラインが、イノベーションを抑えつけるばかりか、米国居住トレーダーがアクセスできない暗号通貨会社を増加させる原因になっていると主張する識者は多くいます。
米国での暗号通貨取引所 サービス停止相次ぐ
実際に2019年5月、6月と大手取引所におけるサービスの停止が相次いでいます。
今年5月にポロニエックス(Poloniex)は、米国拠点のトレーダーに向けて、9つの暗号資産取引サービスの提供を停止しました。その理由として、規制の不確実性を挙げています。
不確実性に関してはまた、Circle社の最高法務責任者であるGus Coldebella氏も次のように述べています。
「米国における、暗号資産に対する法規制へのアプローチが不確実性を生み、イノベーションを損ねていることに疑いの余地はありません。暗号資産とブロックチェーン技術の可能性が最大限に発揮できるよう、明確で将来を見据えた規制の枠組みを支持します。」
ビットトレックス(Bittrex)においては今年6月に、32種の暗号資産取引について米国顧客のアクセスをブロックしました。
その際、共同設立者およびCEOのBill Shihara氏は、法規制の不確実性について「ブロックチェーン技術の進展に対する最大の障害の一つ」と述べています。
さらにその2週間後、バンコール(Bancor)も自社のプラットフォームから米国ユーザーを完全排除することを選択しました。
それでも米トレーダーは暗号通貨取引の根幹を成す
米国で事業展開を求めるデジタル通貨取引所が、規制上の多くのハードルに直面しているのは事実です。
しかし、それにもかかわらず、世界の暗号通貨取引量の主要部分は米国居住トレーダーによって構成されています。
またバイナンスは、24時間で約1兆円相当の取引がプラットフォーム上で行われる、世界最大の取引所のひとつです。(ボリュームランキングはCoin360による)
米国での法規制に準拠しているBAMとのパートナーシップは、米国に拠点を置くにあたって、あたかも地域のステーブルコインを立ち上げる会社として、綿密な準備をしているかのようです。
やはり、成功者は目の付け処と、信頼構築に抜け目がないということが伺えます。
数か月後のニュースが楽しみですね。