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国が発行する仮想通貨「官製仮想通貨」各国の最新情報

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現在、ビットコインを始めとした数多くの仮想通貨が世界中で発行されています。これらの仮想通貨の規制強化する動きが多い中で、国が独自に仮想通貨を発行することが検討されています。

この、国つまり政府が独自に発行する仮想通貨を「官製仮想通貨」と呼びます。

ベネズエラのPetro(ペトロ)を始め、世界各国で導入が検討されている官製仮想通貨があります。

この記事ではその最新情報をお伝えします。

ベネズエラの官製仮想通貨「Petro(ペトロ)」

Petro(ペトロ)とは、南米ベネズエラで発行され実際に利用されている官製仮想通貨です。Petroは、ビットコインのファンであるニコラス・マドゥロ大統領が先頭に立って発行が進められ、利用を促しています。

Petro最大の特徴は価格がベネズエラ産原油価格に連動している、ということです。1 Petro=1バレル相当となっています。つまりPetroは原油に価格を裏付けられていることになります。

ではなぜ大統領が先陣を切って利用を促しているのでしょうか。

その最大の理由はベネズエラがインフレ率26万%(2019年7月度)という、ハイパーインフレ状態にあるためです。この過度なインフレ率は自国法定通貨ボリバルの信用を失墜させ続けています。

そこでマドゥロ大統領はボリバルに代わる新しい通貨を自国に流通させ、世界経済における自国の信用回復を試みています。

また直近では2019年7月にマドゥロ大統領がベネズエラ国内最大手銀行にペトロの窓口を設けるように全支店に命令したことが報道されています。

そして8月26日、ベネズエラ政府がユーザ間でPetroの取引を可能にするプラットフォーム「Patria Ramesa」をローンチすると発表しました。このプラットフォームにより国内外でPetroが安全に取引できることを可能にするそうです。

しかしフアン・グアイド暫定大統領はここまでのPetro計画を良く思っていないようで、ビットコインとボリバルとの両替計画を指示しています。

今後も両者間で意見が異なることが予想されます。

ロシアの官製仮想通貨「CryptoRuble(クリプトルーブル)」

CryptoRuble(クリプトルーブル)とは、ロシアが発行を検討している官製仮想通貨です。2017年10月にプーチン大統領の発案でロシア議会に提出され、関係当局に最終決定権を移譲しています。

当初2019年半ばまで発行を延期すると報道されましたが、依然CryptoRubleの発行は開始されていません。

そして2018年10月にはプーチン大統領顧問のセルゲイ・グラジエフ氏がこの計画に進展がないことを明らかにしました。

したがってCryptoRubleが実際に取引されるようなるのかが分からなくなっています。

2019年5月のニュースではロシア中央銀行が金に裏付けられた仮想通貨の発行を検討していることが明らかになりました。この仮想通貨はCryptoRubleとは別の種類と考えられており、ますます官製仮想通貨CryptoRubleの誕生が怪しくなっています。

ドバイの官製仮想通貨「emCash(エムキャッシュ)」

emCash(エムキャッシュ)とは、ドバイが開発を進める官製仮想通貨です。

emCashはUAEの法定通貨ディルハムの価値に固定されるステーブルコインです。

ドバイ政府は官製仮想通貨の構想を支持しており、現在emCash導入に向けたプロジェクトにはPundi X、Ebooc Fintech&Loyalty Lab、emcreditといった企業が関わっています。Pundi X社ではemCashを実際に使用する際の決済システム端末を開発しています。

ただし2019年の最新情報が公開されておらず、現在どの程度開発が進められているかは分かりません。

UAEとサウジアラビアの官製仮想通貨「Aber」

Aberとは、UAE(アラブ首長国連邦)とサウジアラビアが共同で開発を進めている銀行間取引のための官製仮想通貨です。

今年1月に発表された共同声明では、Aberはブロックチェーン技術を利用した金融決済でのみ利用可能となり、試験的に両国の一部の銀行に制限する、とされています。

この試験的なAber利用は、両国間の関係を強化する7つの戦略的イニシアチブの一環として行なわれ、Aberの裏で用いられている技術が低コストかつシームレスであるクロスボーダー取引が可能であるか確認するためのものである、としています。

この戦略的イニシアチブでは特にサービス、金融市場、観光、航空、アントレプレナーシップ、税関、安全保障の分野における二国間の統合を反映するもので、仮想通貨の共同開発も含まれています。

スウェーデンの官製仮想通貨「e-Krona(e-クローナ)」

e-Krona(e-クローナ)とはスウェーデンの中央銀行Riksbankがキャッシュレス社会実現を加速させるべく開発を進めている官製仮想通貨です。

2017年春にプロジェクトが始まると開発は急ピッチで進められ、今年2019年にはパイロットテストが予定されています。(記事執筆時点ではまだ開始していません。)

このパイロットテストでは決済に使用するアプリやカードにチャージすることができ、e-Kronaをどのようにして作り出すのかを探ります。また最終的には中央銀行の口座に連結される上で必要となる法的変更に関しても検討をしていくようです。

またRiksbankはパイロットテストを無事に終了し、2021年にはe-Kronaを本格導入すると考えているようです。最初は現金との併用により使用される予定ですが、やがては現金に代わる主要な決済手段として利用されることをRiksbankは見込んでいます。

e-Kronaが導入されると、ユーザはこれをディジタルウォレットで管理するようになります。商品を購入したり、サービスを利用したりする際には自分のウォレットから相手に送金することで支払いが完了します。当然この送金にはブロックチェーン技術が使われるため悪用は困難です。

ただしこのe-Kronaはスウェーデン国内でのみの流通と予定されているため、国外での利用は不可能となります。

同国ではキャッシュレス化が進んでいます。モバイル決済が普及していることに加えクレジットカードやデビットカードは同国で最も広く使用されています。議会では、この急速なキャッシュレス化の勢いを抑えるために大手銀行に対して現金の取り扱いを義務付けるよう提案するまでになっています。

マーシャル諸島共和国の官製仮想通貨「Sovereign(ソブリン)」

マーシャル諸島共和国は太平洋上に浮かぶ島国で自国法定通貨はアメリカドルです。同国政府は昨年2月に国内法定通貨に関する法律を布告しました。

この法律では法定通貨としてのディジタル通貨を定義しています。このディジタル通貨というのがSovereign(ソブリン)です。

同法律では、このソブリンが財務省により発行され米ドルに加えて法定通貨となること、そしてICOによって交付されることなどが含まれています。

今年3月には同国政府がイスラエルの送金企業Neemaと提携して2019年内に世界で一番安全な貨幣システムとしてソブリンを同国内に流通させることを目指しています。

ウルグアイの官製仮想通貨「e-Peso(e-ペソ)」

e-Peso(e-ペソ)とはウルグアイが運用を進める官製仮想通貨です。

2017年11月から6カ月間、希望者1万人を対象にe-Pesoを2000万ペソ(日本円で約7800万円)分を同国中央銀行が発行し試験運用をしました。

希望者が保有するe-Pesoは公共料金や店舗での支払いのほか、個人間での送金も可能でした。この試験的な利用は2018年4月に成功して終了しました。

今後も試験運用を行ない、潜在的な課題解決を進めていくそうです。残念ながら、2019年現在どのように運用されているかはわからない状況です。

その他の国々の官製仮想通貨

数多くの国が官製仮想通貨を導入しようと考えています。その中で以下の国は導入を検討しているようですが、詳細が掴めない国です。

エストニア

エストニアではestocoin(エストコイン)と呼ばれる官製仮想通貨の開発が進められています。e-Residency(電子住民)システムの一環としてestocoinは開発がされています。

しかし2018年8月にこの開発プロジェクトを縮小することを発表しました。そのため官製仮想通貨としては導入される可能性があるのですが、法定通貨にはなり得ないそうです。

ウクライナ

ウクライナでは、ウクライナ国立銀行(NBU)が自国通貨フリヴニャのディジタル版の導入を検討しています。ただしこのディジタル版通貨の基盤にはブロックチェーンを用いることはないそうです。この報道があったのが昨年1月。当時からの最新情報が出回っておらず、現在どのように構想がまとまっているかは分かりません。

中国

仮想通貨に対して厳しい制限をかけている中国では、中央銀行にあたる中国人民銀行が中国独自の仮想通貨法定数字貨幣の発行を2017年から検討しており、現在は発行準備段階であるとしています。

Facebook社が2020年に運用を開始する予定のLibra(リブラ)よりも速い市場展開を目指しており、同国内のリーク情報では早ければ今年11月に発行が開始されます。ただし、この情報に対して中国人民銀行は信憑性が無いとしているため、正確な運用開始日は分かっていません。

この官製仮想通貨は従来の仮想通貨の模倣ではなく、より複雑な構造を採用しています。人民銀行決済局次官の穆長春氏によると、現在発行を検討している官製仮想通貨は2層構造を取っており、上層レイヤーは人民銀行と商業銀行間の取引に活用し、商業銀行と消費者の取引は下層レイヤーで行う仕組みとなっているようです。

スイス

スイスでは、同国政府が独自の仮想通貨e-franc(e-フラン)の発行を検討しています。しかし中央銀行は否定的な姿勢を貫いており、政府と銀行との間で意見の摺合せをしていく必要があります。

まとめ

既に実用化されている官製仮想通貨は少ないですが、着々と世界各国で発行を検討されてきています。

今後も官製仮想通貨から目が離せません。

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