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イーサリアムのハードフォーク全貌

2017.10.25
イーサリアムのハードフォーク

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仮想通貨について調べているとイーサリアムのハードフォークについてたびたび耳にします。マウントGOXの事件を含めイーサリアムは頻繁にハードフォークを行っているようですが、それぞれのハードフォークはなぜ行われているのでしょうか。今回はイーサリアムのハードフォークの全貌を明らかにします。

ハードフォークとは

ハードフォークとは、もともと1つだけ存在していたブロックチェーンが分岐し、2つのチェーンとなることです。元のブロックチェーンのノード(ブロックチェーンネットワークに接続していたコンピュータ)は新しいブロックチェーンを拒否するため、分岐する前のチェーンも分岐した後のチェーンも永続的に存在し続けます。

ビットコインではブロックの容量を変更するためのハードフォークが行われ、仮想通貨業界に大きな影響を与えていますが、イーサリアムでもハードフォークは行われています。2016年6月のThe DAOのハッキング事件によってハードフォークが行われたことは、仮想通貨業界にとって大きな出来事でした。

実は、イーサリアムではThe DAO事件のときのハードフォークの他にもハードフォークが何度も行われているのです。ここではイーサリアムではどのようなハードフォークがどのような意図で行われているのか紹介していきます。

イーサリアムの特徴

イーサリアムは、2015年7月にリリースされたプラットフォームとしての通貨です。ロシア人のヴィタリック・ブテリン氏を中心に開発されました。イーサリアムの大きな特徴としてはスマートコントラクトであることと、PoS(プルーフオブステーク)を導入しようと取り組んでいることです。スマートコントラクトとは、一連の契約事項が人の手を介することなく自動的に実行されることです。

PoSは、ビットコインのコンセンサスアルゴリズムPoW(プルーフオブワーク)とは異なった仕組みで、マイニングの成功確率にコインの保有数によって優先順位をつけることです。PoWは単純にマシンパワーで成功率が変わっていたために、マイニングにかけるコストが非常にかかりました。しかしPoSでは、コイン保有数によって成功確率が変わるため、PoWと比較してコストが格段に減ります。そのため、PoSをコンセンサスアルゴリズムとして取り入れようという動きがあります。

イーサリアムもこのPoSをコンセンサスアルゴリズムとして使用しようとしています。そのためにイーサリアムは、何段階にも分けてイーサリアムのプラットフォームを改変することにしています。

イーサリアムのハードフォークの種類

1、システム改変のためのハードフォーク

イーサリアムのハードフォークにはいくつか種類があります。そのひとつがイーサリアムのプラットフォームの改変です。イーサリアムはβ版でリリースした後、自身のブロックチェーンをハードフォークすることによって徐々に進化していき、最終的にPoSが導入されたブロックチェーンを完成させるという計画を初めから立てています。つまり、イーサリアムはハードフォークを前提としたプラットフォームなのです。

この計画はリリース初期から、Frontier→Homestead→Metropolis→Serenityという順番で行われる計画となっており、「Frontier」という開発者向けのβ版から開始され、「Homestead」「Metropolis」を経て「Serenity」では完全にPosに移行することになっています。

Frontier(フロンティア)は2015年にイーサリアムがリリースされたころの状態のことです。Frontierはいわゆるβ版という開発者や技術者向けのバージョンで、これからのイーサリアムの基盤として公開されました。そのため、問題があれば開発者によってロールバック(巻き戻し)が行われるという条件付きのものでした。

Homestead(ホームステッド)はより精度が高められたバージョンで、スマートコントラクト作成時のGas(ガス)コスト(ブロック生成時の料金)が上がり、署名の検証が厳格化されることや調整アルゴリズムの難易度が下がる等といった変更がありました。

・Metropolis(メトロポリス)では一般の人でも使用することが可能なようにインターフェースが作成されています。大きく分けてByzantium(ビザンチウム)Constantinopolis(コンスタンティノープル)の2段階で構成されています。主に暗号鍵の仕組みの変更によるセキュリティ強化、トランザクション実行の匿名性強化、一般向けのインターフェースの作成とともにPoS移行の準備が行われます。

・Serenity(セレニティ)は最後のハードフォークで、PoWからPoSへの移行が完成することになっています。イーサリアムの事業者は2018年にはハードフォークを行い、Serenityに移行することができるとしています。

このブロックチェーンの改変によってイーサリアムの価格は変動したのでしょうか。

・Homesteadに移行したとき

図のように、2016年3月14日にハードフォークする直前で価格が上昇しています。

0.9ドル(約100.8円)から最高14ドル(約1,568円)にまで上昇しました。

・Metropolisに移行したとき(Byzantium)

2017年10月16日に移行した後では、上昇するのではなくむしろ下がっています。350ドル(約39,200円)から最低225ドル(約25,200円)にまで下落しました。しかしながら、11月にMetropolisの第2段階であるConstantinopolisが行われる予定になっているので長期的にみていくことが必要かもしれません。

イーサリアムのシステム改変のためのハードフォークをまとめると以下のようになります。

 

2、ハッキング事件解決のためのハードフォーク

The DAOがハッキングされたことによるハードフォークもありました。The DAOのハッキング事件とは、イーサリアムをプラットフォームとして使用している「The Dao」というICOが何者かにハッキングされ、ICOを行うことによって集めたイーサリアムが大量に盗まれるという事件です。このことによって当時約75億円分のイーサリアムがハッカーのものになってしまったため、何らかの対策を取る必要がありました。

その対策として行われたのがハードフォークです。ハッキングされたイーサリアムのブロックチェーンをハッキングされる前のブロックチェーンに戻し、ハッキングをなかったことにしたのです。このハードフォークによってイーサリアムは、元のブロックチェーンを使用したプラットフォームである、「イーサリアム・クラシック」と、ハッキングをなかったことにしたブロックチェーンである「イーサリアム」の2つに分かれました。

3、Dos攻撃に対応するためのハードフォーク

これは、Dos攻撃対策のためにセキュリティ強化を行ったハードフォークです。PoS導入のためのシステム改変のHomesteadを行った後、イーサリアムは何者かによってDos攻撃を受けました。Dos攻撃とはDenial of Service attackの略で、情報セキュリティの可用性に対して攻撃し、侵害するという攻撃のことです。サーバやリソースに意図的に荷重に付加をかけることや、その脆弱性を突くことによって行われます。そのDos攻撃からイーサリアムを守るため、イーサリアムの事業者は再びシステムの改変を行いました。その改変はハードフォークによるものでした。

2段階にわたってハードフォークを行い、ガスコストを上げることによってDos攻撃を防ごうとしたのです。イーサリアムでは、送金主やコントラクトの実行者がガスを支払い、支払いにはイーサ(ETH)が使用されます。このガスコストを上げることでDos攻撃のコストが上がります。その結果、攻撃を防ぐことができるのです。

まず1段階目では「EIP150(Ethereum Improvement Protocol 150)」というハードフォークを行いました。Dos攻撃を受けているコードを特定し、そのコードに関するガスコストを上げます。そのコードの価格に合わせることで攻撃が安易に行われないうえ、攻撃を防ぐためにブロックチェーン生成の料金を上げなくてもよくなります。

2段階目は「Spurious Dragon(スプリアスドラゴン)」と呼ばれ、Dosの攻撃者がシステムに大量に流入していたときの空アカウントを移動させ、結果的にブロックチェーンのサイズを増やすなどといった作業を行いました。

以上のように、イーサリアムではさまざまな目的に応じたハードフォークが行われてきました。時系列にまとめると以下のようになります。

まとめ

一口に「ハードフォーク」といっても、危機回避のためであったり、システム改変のためであったりと目的が大きく異なります。ビットコインでもハードフォークが行われましたが、そのハードフォークはブロックの容量に対する対策のものでした。

仮想通貨やそのブロックチェーンはハードフォークによってその形態や仕組み、価値が大きく変化します。どのようなときにどのような理由でハードフォークが行われるのかを注意して、その影響を見ていきたいですね。

 

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