<この記事(ページ)は 5分で読めます>
このたびCoinbase(コインベース)がザポを、5,500万ドル(約58億3000万円)で買収したようです。
関係筋によると、買収額は、あの投資最大手のFidelityを上回ったということです。
拠点をサンフランシスに置くコインベースは、自社のカストディ業務を拡大させるべく、今回の買収を推し進めた模様です。
これにより、流通する全ビットコインの5%以上を、また、70億ドル(7,420億円)以上の暗号資産を管理下に置くことになります。
Xapo(ザポ)といえば、暗号資産保管サービスをするカストディアンです。
スイスの山の下に金庫室があってビットコインを蓄えている、という話でも有名な企業ですね。
規制要件を満たす安全なストレージシステムを構築
2013年に設立されたザポは、今後も取引業務を維持し、一般消費者がビットコインを売買できるようにします。創業者のベンセス・カサレス氏は、CEOとしての役割も継続すると述べています。
カサレス氏は初期のビットコイン伝道師(エバンゲリスト)としてクリプト界では有名な起業家です。氏は、ザポの小売ビジネスの大部分は南アメリカやその他の発展途上国で行われていると言います。
アルゼンチン出身でもある氏は、これまでもしばしばインタビューの中で、
「腐敗した無能な政府の金銭的略奪に対して一般の人々がどれほどビットコインを防衛手段としているか」
を話しています。
小売取引業務は常にザポの中心的なビジネスであり、カストディ業務は、あくまでも副業的な位置づけなようです。
カストディ業務は「裕福なビットコイン投資家が自身のデジタル資産を安全に保管する場所を必要としていた時に発展した」と話し、さらに以下の様に発言しています。
「法人機関投資家向けビジネスと消費者向けビジネスとを同時にすることは困難だ。今年始め、我々はそのことについて再検討してみた」
また、氏はザポのカストディビジネス買収の入札についても言及し、「コインベースよりも高い値をだしてくる業者もいたが、いずれもザポのクライアントが受け入れるにはセキュリティや規制資格が不十分だった」とのことです。
それらの競合のなかには、8月初旬にコインベース・カストディに約27億ドル(2,862億円)相当の225,000BTCを移したGrayscale Investmentsも含まれていました。
ザポのカストディの管理資産はどう変わるか
情報によると、ザポのクライアントの大多数は、彼らの資産をコインベースに譲渡することに同意している模様で、514,000BTCをコインベースが管理することになります。
残りのザポの顧客アカウントは、35億ドル(3,710憶円)相当の価値があると伝えられており、コインベースがこれらの顧客にも承諾を得ることが出来れば、カストディ総額は860,000BTCを超えるだろうと言われています。
現在、BTC価格は10,000ドル(約106万円)と12,000ドル(127万円)の間で変動しており、約1640万BTCが流通しています。
しかし、アナリストによれば、その内400万BTCは永久に失われているだろうと考えられています。
その数字を考えると、管理総額の大きさが伺えます。
ザポの買収前、コインベース・カストディは、ビットコイン以外の通貨も含めて、10億ドル(約1060億円)を超える資産がありました。
コインベースとザポの間の噂は5月にはすでに表面化していましが、顧客資産の譲渡に対する慎重さやスイスの金庫の所有に関してなど、詳細についてはかなりの時間を要しての締結となりました。
スイスの山の中の金庫室については、武装警備員や何層も重なる花崗岩によるセキュリティ対策など、そのある種行き過ぎた警備はこれまでも数々の報道のネタになっていました。
その金庫室は、小売顧客に代わってビットコインを保管するためにザポが所有を継続するようです。
一方で、コインべースには、ビットコインウォレットのロックを解除するプライベートキーを各都市の秘密の場所に保管することも含め、独自のセキュリティ対策があります。
取引業務から保管業務に拡大する意図とは
コインベースにとって、ザポのカストディ部門の買収は、これまでの根幹ビジネスであった取引業務からは外れるものです。このことから、取引手数料で潤っている一方で、そこに安寧としていられないという姿勢の現れでもあります。
コインベースは、経済界に対して暗号通貨が信頼を得るための重要なステップが、カストディ業務であると捉えています。
今回の買収劇も、暗号資産をポートフォーリオに追加することに慎重だった投資家たちを、カストディ業務によって惹きつけることが狙いのようです。
コインベースの新しいカストディサービスの中には、保険と規制関連サポート、および利子(正確にはステーキング)があります。
投資家が資産を増やす助けとなるように、ビットコインを貸し出し、それに利子をつけるというようなことや、将来的には他社のプラグイン機能を追加できるようにもなるということです。
コインベース以外にも、複数の企業でカストディ業務の展開が進んでいます。機関投資家の信頼を獲得するための動きが、今年の暗号資産業界では活発であるといえるかもしれません。