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暗号資産の世界では常に、サイバーセキュリティの問題や資金違法利用、マネーロンダリングなどが問題となります。法規制との追いかけっこです。
そして最近日本で開催されたG20でも議題となった暗号資産とマネーロンダリング対策について、FATF(金融活動作業部会)はアップデートされたガイドラインを正式に受け入れました。
そんな対策について議論される中、時折みかけるVirgin Bitcoin(ヴァージン・ビットコイン)という言葉があります。
このヴァージン・ビットコインは愛好家の間で非常に需要が高くなっていると言うので、どんなものなのか知っておく必要がありそうです。
「汚れていない」ビットコイン
サイバーセキュリティの科学捜査を得意とするプロ集団の企業Cipher Trace(サイファー・トレース)のCEOであるDave Jevans氏によれば、「Virgin Bitcoin」は、トランザクション、つまり帰属履歴のついていないBTCトークンを、そのように定義していると言います。
どのウォレットにもストレージにも関連できないので、これらのコインは、犯罪やマネーロンダリングに利用されやすいという面があります。
「汚れた」ビットコインは価値が下がる可能性がある
事情に詳しい中国の企業Babel Finance (バベル・ファイナンス)のCEO、Flex Yang氏によれば、
「G20で受け入れられた新しいガイドラインが採用されるようになれば、暗号資産取引所間のトランザクションには送信者と受信者に関する透明性が求められるようになります。
これにより、規制当局が違法な取引やハッキングなどに使われたウォレットを特定するために様々な台帳を調査するので、広範囲に渡る精査へと門戸を開きます。
ビットコインは機関投資家の関心を引いていることに変わりはありませんが、ビットコインのリスクへのしきい値はかなり低いです。」
と、述べています。
履歴によって、マネーロンダリングやその他の違法行為との関連が続くと、トークンは規制当局によって不当に押収されたりする可能性があるとも彼は付け加えています。
つまり、麻薬カルテルや犯罪企業から「銀行」にお金を預けているようなものだと。
そのようなお金なら、銀行は取引の処理を拒否するでしょうと、話しています。
マイニング大国の中国、ヴァージン・ビットコイン入手への動き
さらにYang氏からの情報では、中国政府はこのヴァージン・ビットコインを入手しようとしているかのようだと言います。ヴァージン・ビットコインへの需要は世界的に高まっており、中国でのマイニングは依然として大規模に行われているようだというのです。
「購入者は米国やその他の規制が強い国々から来ています。中国のマイナー達は単なる売り手です。購入者はこれらのコインの真新しさ故に求めているのかもしれませんし、同時に、規制の曖昧さにあるコンプライアンスの容易さを感じているとも言えます。
実のところ、ヴァージン・ビットコインは家族の資金で購入していたり、なんとなく買っているだけ、あるいは個人で購入しているだけの人には恩恵をあたえないかもしれません。
それでも、ヴァージン(ホワイト)・ビットコインの信頼は明らかに増大しており、結果としてプレミア価格となっています。」
と、彼は話しています。
同じビットコインでも価値が違う?ファンジビリティ(代替性)とは
ビットコインをとりまく主な問題は、マネーロンダリングやテロリズム関連関連活動などに付随して、ダークな取引履歴が潜在することです。
ビットコインの特性では、複数の(データ)トランザクションの後でさえも、その決済の痕跡はいとも簡単に所有者まで遡ることが出来てしまうのです。
これは法定通貨にはない特性です。(法定通貨にも製造番号がついていますが、追跡機能はついていません。)
ビットコインには、このトレーサビリティという特性が備わっています。
しかしその特性故に、ダークなTx(トランザクション)履歴で汚されたBTCとそうでないBTCの価値は異なって来ることがあり得ます。
今後、追跡調査されてダークなTxがあるBTCは規制当局に押収されるなどのリスクもあり、そのような汚れたBTCを購入したいという人も減ってくるかもしれません。
こういったことは法定通貨では起こりません。同じ1万円は1万円です。
これが、ファンジビリティという特性で、法定通貨にはファンジビリティ(代替性)があると言えますが、ビットコインには無いと言えます。
こういった価値の低下が起こると、個人投資家などの少額BTC保有者にはさほどの影響はないものの、ヘッジファンドなどにとっては無意識にそれらの資産を保有してしまう危険性があります。
これは大きな懸念材料だと、サイファー・トレースのCEOは述べています。
そういった背景で、ヴァージン・ビットコインは需要が高まっていますが、そこにプレミアがつくことに繋がった出来事も影響しているようです。
通貨の取引履歴を追跡できないようにする業者も登場
汚れたコインとそうでないコインを混合して情報源の追跡を困難にするサービス、暗号通貨ミキシングサービスをする業者(タンブラー)があります。彼らは自ら合法だと主張しているのですが、マネーロンダリングに関連していることで捜査対象となりました。
2018年にその仮想通貨タンブラー大手の一つBestMixer.ioを調査したサイファー・トレースによって、このような業者がヴァージン・コインだと言って5%チャージしているコインは、ダークな取引履歴を追跡されにくいようにしたものだと分かりました。
現在かれらのサーバーは捜査当局によって押収されているようです。
(参照:https://ciphertrace.com/crypto-dusting/)
その手法はダスティング・キャンペーンと言われ、一般のユーザーに広告キャンペーンと称してクリックさせることで無意識のうちに汚れたコインとミキシングされているような手法だということも分かって来ています。ダスティング攻撃やクリプト・ダスティングとも言われます。
彼らは不都合な履歴のついたコインをブロックチェーン分析ツールで追跡されないようにしているのです。非常に多くのユーザーアドレスを汚染させることで、汚れたコインを紛らせて分からなくするのが目的です。
犯罪利用だけでなく、汚れたコインを保有する危険性を避けたい機関投資家は履歴の綺麗なコインにしたいという需要もあります。プレミアムはどんどん高くついているようです。
まとめ
帰属データを持たないヴァージン・ビットコインを求める事を是とするか非とするかという話になると思いますが、しかし、正真正銘、マイニングされたばかりの未使用のコインは可視性と価値を高めました。むしろこちらをヴァージン・ビットコインと呼びたいと思いますが。
取引所の規制が強まるにつれ資金洗浄は難しくなっているので、クリーンなコインの価値は高まっているということです。