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ライトニングネットワークはビットコインの救世主となるか①?仕組みを徹底解説

ライトニングネットワークの仕組みと将来性

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いま注目の集まるビットコインのライトニングネットワークとは何なのでしょうか。その仕組みから実現性まで徹底解説します。

ビットコインは通貨として使いづらい

手数料の高騰

ビットコインが注目された理由の一つに「送金の速さと手数料の安さ」がありました。特に国際送金する際には、従来の銀行間送金(着金まで数日かかり、数千〜数万円の手数料が必要)に比べ、ビットコインなら10分強で着金でき、手数料も50〜100円ほどしかかかりませんでしたので、それがビットコインの強みとされていたのです。少なくともビットコインが10万円台だった2017年初頭までは、それが当然のこととして語られていました。

しかし、ビットコイン価格は2017年の1年で20倍に高騰し、事情は変わってきました。

まず、取引所における送金手数料をみてみましょう。ほとんどの人が取引所のウォレットに仮想通貨を保管していますが、そこからビットコインを送金する場合の手数料は下記の通りです。

取引所 送金手数料(BTC)
Coincheck 0.001
bitFlyer 0.0008
bitbank 0.001
Zaif 0.001 以上

現在のビットコイン価格(1BTC=130万円)で計算すると、0.001BTCは1300円にもなります。これでは、1万円分のBTCを送るのにも、送金手数料1300円が必要ということになります(BitPointやGMOコインなど送金手数料無料の取引所もあります)。

また、Copayや取引所のモバイルウォレットでビックカメラなどの店舗で買い物をする場合にも、上記の送金手数料がかかってきます。

店舗でのビットコイン支払いの現状

ビックカメラの場合はbitFlyerの決済サービスを採用しているため、bitFlyerのウォレットから支払いすれば、手数料は無料になります。bitFlyerの決済サービスを採用している店舗は多く、有名中華レストランの聘珍楼などでもビットコインで支払いができます。店舗側の手数料負担は、クレジットカードの約3%よりも少ない約1%なので、店舗側にはメリットとなります。
同様に、Coincheckの決済サービスを採用している店舗では、Coincheckウォレットからの支払いなら手数料はかかりません。

送金の遅延

さらに、ビットコイン取引量の増加から承認にかかる時間が大幅にかかるようになり、送金完了までに数日を要するようなひどい渋滞もたびたび起こるようになりました。送金作業を速くするためには、さらに手数料を上乗せするほかありません。

ビットコインではreplace by feeという機能が実装されていて、ビットコインの取引が詰まっているときには手数料を追加することで、より速く承認してもらうことができます。承認作業をするマイナーは、手数料の高いものから優先的に処理していくので、迅速な送金をしたい場合には手数料を上げることで解決できます。

しかし、ここで思わぬ事態が生じました。多くのユーザーが送金を速くしようと高い手数料を指定するようになり、手数料がさらに高騰したのです。下図のように、2017年12月から取引手数料が高騰し、1回の取引の承認に必要な手数料がなんと55ドル(6000円)ほどになることもありました。

このように、ビットコインの利点であった「送金の速さと手数料の安さ」は、もはや過去のものとなっています。1年間で20倍にも価格が高騰し、その間もボラティリティの激しい値動きをしているビットコインは、「誰もが安心して使用できる安定した通貨」とはかけ離れたものとなってしまっているのです。

こうしたビットコインの問題を解決しようと、新しい技術が開発されています。

ペイメントチャネルとは

ビットコインの送金詰まりや手数料高騰を解決し、マイクロペイメント(小額決済)でも使いやすくしようとするのが、ライトニングネットワーク(Lightning Network)という技術です。

ライトニングネットワークでは、ペイメントチャネルと呼ばれるオフチェーン(メインのブロックチェーンとは別のマイニングを必要としないチェーン)にチャネルを開設し、そこで取引の管理を行うことでビットコインのブロックチェーン上で扱われるトランザクション(取引)の量を減らすというものです。

ペイメントチャネルは、通常2つのノードの合意によって開設されます。ペイメントチャネルでの送金はこの2つのノードの間で行われます。

まず、2つのノードが、ビットコインのブロックチェーン上にあるアドレスへ送金を行います。例えば、AさんとBさんがペイメントチャネルの開設を行うために、Xというアドレスに0.5BTCずつ送金します。アドレスへの1BTC分の送金が完了すると、ブロックチェーン上での取引はいったん終わり、ブロックチェーンの外側(オフチェーン)での取引、つまりペイメントチャネルでの取引に移行します。

ペイメントチャネル内で入金された1BTCの分配を変更する、つまり取引することで、2つのノードの間でのビットコインの授受を行います。

ペイメントチャネルの中でビットコインの取り分をAさんが0.3BTC、Bさんが0.7BTCに変更するということにAさんとBさんが賛同すると、実質的にAさんから Bさんへの0.2BTCの送金が行われます(2つのノード間で行われるマルチシグ)。

ペイメントチャネルの中でこのような取引を行う分に関しては、ブロックチェーンでの承認を必要としないため、取引は瞬時に成立し、取引手数料が発生しません。

ノード間での取引がすべて完了した場合は、ビットコインのブロックチェーン上にそのような取引を書き込んでペイメントチャネルを閉じることができます。仮にAさんが0.3BTC、Bさんが0.7BTCの段階で取引が完了したとすると、ペイメントチャネルの閉鎖に伴い、XからAさんのアドレスに0.3BTC、Bさんのアドレスに0.7BTC送金が行われ、ブロックチェーン上に記録されます。

こうして、オフチェーンのペイメントチャネルを開設し、そこで多くの送金のやり取りを行うことで、ブロックチェーンでのトランザクションの数を大幅に減らすことができます。

ライトニングネットワークとは

2つのノード間で開設されたペイメントチャネルを次々につなげ、順々にリレー送金を行うネットワークがライトニングネットワークです。ペイメントチャネルで直接つながれていないノードとの間でも、ブロックチェーンを使わずにリレー送金することができます。

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例えば、AさんとBさん、BさんとCさんはそれぞれペイメントチャネルでつながっていますが、AさんとCさんはペイメントチャネルでつながっていません。このとき、AさんからCさんに1BTC送金する場合は、BさんがCさんに1BTC送金し、AさんがBさんに1BTC送金することで、実質的にAさんからCさんへの送金を行うことができます。これらの2つの送金はペイメントチャネル上で行われるため、オンチェーンでのトランザクションのように取引の承認を待つ必要はありません。

Bさんという仲介を挟んでもトラストレスに送金を行うために、次のような仕組みがあります。

ビットコインではある特殊な条件を満たした場合の送金先を指定することができます。例えば、「5日以内にBさんの電子署名とある値(Rとします)が署名されたらBさんに1BTCを送金する」というような指定を行うことが可能です。

この仕組みを利用して、AさんからCさんにBさん経由で1BTC支払うときには次のような支払いが行われます。ただし、RはCさんが自由に決めることのできる文字列だとします。あらかじめCさんはAさんにRのハッシュ値を伝えておきます。

AさんがBさんに向けて、「5日以内にBさんの電子署名とRが署名された場合に1BTCをBさんに支払う、署名が行われなければAさんの元に戻す」という条件付きで1BTCを支払います。

次に、BさんがCさんに向けて、「3日以内にCさんの電子署名とRが署名された場合に1BTCをCさんに支払う、署名が行われなければBさんの元に戻す」という条件付きで1BTCを支払います。

このような2つの支払いが行われると、Cさんとしては3日以内にBさんの支払いに署名を行わなければ1BTCを受け取れないので、3日以内に自分の電子署名とRを署名します。

すると、BさんからCさんに1BTCが受け渡されると同時に、 BさんはCさんからRという情報を得ます。これにより、BさんはCさんから得たRという情報と自分の電子署名を用いてAさんから1BTCを受け取ることができます。

最後に、AさんはBさんから得たRという情報をハッシュ関数に入力し、Cさんから聞いていたRのハッシュ値と一致すると、BさんがちゃんとCさんに支払いを行ったということが確認できます。

このようなシステムでは、Bさんは1BTCを受け取るよりも前に1BTCを支払うことが不可欠です。送金を仲介するノードがビットコインを持ち逃げすることができないので、トラストレスに送金を行うことが可能になります。

ライトニングネットワークなら手数料が無料

ライトニングネットワークの中での取引は、ビットコインのブロックチェーンに取り込まれないので、マイナーの承認作業は必要ありません。つまり、送金手数料は無料です。

しかし、どのようなペイメントチャネルであっても、開設と閉鎖の2回だけは必ずブロックチェーンに取引内容が記録されることになるので、その手数料2回分が1つのペイメントチャネルごとに必要になります。

その手数料は、ペイメントチャネルを開設・閉鎖したノードが負担することになります。その負担分は、ペイメントチャネルの中で多数の取引がされるほど希釈されていくので、1取引あたりの実質的な手数料は極めて安くなります(ちなみに、ノードはペイメントチャネル内での取引に中継手数料(Relay Fee)を設定し徴収することも可能です)。

例えば、ビックカメラで買い物する際には、ビックカメラがbitFlyerの決済サービスを採用しているためbitFlyerのウォレットから支払う場合には手数料がかからないと冒頭で説明しました。なぜなら、bitFlyer内の取引なら、ブロックチェーンを通さずにやり取りされる取引所内ネットワークでの取引だからです。

ライトニングネットワークも、まさにこれと同じようなものなのです。ペイメントチャネル内での取引は、ブロックチェーンとは離れたオフチェーンでの取引であり、ブロックチェーンを介さないので、送金手数料を無料にすることができます。

そのため、ビックカメラのような店舗がライトニングネットワークを使って膨大な数の決済をすれば、チャネルの開設と閉鎖にかかる費用負担は十分に消化できる経費になります。例えば、お客がクレジットカードで買い物をしたら、お店はクレジットカード会社に約3%の手数料を支払わなければなりませんが、お客がライトニング支払いを選べば、お店の負担は限りなくゼロに近く、費用負担が大幅に軽減されます。

これが、ライトニングネットワークの小額決済が実質的に無料とされる理由です。

しかし、この夢のようなライトニングネットワークは本当に実現するのでしょうか。その実態を探ります。

 

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ライトニングネットワークはビットコインの救世主となるか②?本当の将来性

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