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ビットコインゴールドをめぐる噂の真相

ビットコインゴールドをめぐる噂の真相

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ビットコインが2017年8月1日にハードフォークしてビットコインキャッシュが誕生したことは、つい先日まで大きな注目を浴びていました(ビットコインキャッシュの記事についてはこちら)。

ハードフォークの直前まで、分裂によって新しく生じるビットコインキャッシュが、はたして価値をもつのか大いに疑問視されていましたが、ふたを開けてみると、現在ではビットコインの約6〜10%の価値をもち、時価総額4位をマークしています。

SegWit実装後、NYA(ニューヨーク合意)に基づいてブロックサイズの拡大が11月に行われることになっていました (SegWit2xについての記事はこちら)。しかし、ビットコインコア派が反発し、ここでさらなる分裂が起こるのかと危ぶまれています。

これに加えて、新たにマイニングプール主導で開発されたコイン「ビットコインゴールド」がハードフォークして誕生させることを発表しました。それも、10月25日時点のビットコインの保有高に応じてビットコインゴールドが配布され、11月1日に上場されるという突然の事態となりました。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

ビットコインゴールドとは

そもそも、ビットコインゴールドはビットコインとどのように異なるのでしょうか。

実は、ビットコインゴールドはビットコインの現在の仕様に大きな不満を抱えてハードフォークを引き起こそうとしているのではなく、不満の対象は他にあります。この点については後で詳しく説明しますが、ビットコインゴールドの開発者はビットコインコアをリスペクトしていて、仕様の改変は大規模なものにせず必要最小限に留めています。ビットコインと異なる点は以下の2点に集約できます。

ASIC耐性

1つ目は、ASIC耐性です。

ビットコインのレガシーはSHA-256アルゴリズムを採用していますが、このアルゴリズムでは中国系マイニングプールの開発したASIC BOOSTという手法を用いることができます。ASIC BOOSTという手法はマイニングでナンス値を計算で求める段階で特殊な計算を行うことにより、大幅に計算速度を上げることができます。

しかし、このASIC BOOSTを実装するためには大規模な資金が必要となるため、これが個人のマイナーでは導入することが経済的に厳しいのが現状です。したがって、個人のマイナーはビットコインのマイニング市場に参入するのにASIC BOOST実装は予算的に断念することになり、その結果、ASIC BOOSTを用いた中国系マイニングプールにハッシュレート(採掘力)で及ばず、マイニング市場に参入しても利益が上がらなくなっています。

このため、ビットコインのマイニングプールは大手のマイニングプールの寡占市場となっていて、実はこれがビットコインゴールドが最も憂慮しているところなのです。そもそもビットコインとは、本来権限の分散を目指すため中央主体の非存在を掲げていたものであるはずなのに、実際には、資本にものをいわせた大手マイニングプールがマイニング市場を取り仕切り、大きな影響力を振りかざしています。

これに対して技術で対抗しようとしているのがビットコインゴールドで、ビットコインゴールドではequihashというアルゴリズムを採用することで、ASIC BOOSTでのマイニングが不可能になっています。equihashとは、Zcash(ZEC)などでも採用されているマイニングアルゴリズムで、マイニングはGPUで行われます。これにより個人レベルのマイナーをマイニング市場に呼び戻し、非中央集権的なビットコインを取り戻すことを目標としています。

難度調整頻度の変更

2つ目は、マイニングの難度(ディフィカルティ)を調整する頻度の変更です。ビットコインやビットコインキャッシュにおいては、マイニングの際に求めるナンス値の満たす厳しさを2016ブロック(2週間)ごとに変更していました。正確には、2016ブロックのマイニングにかかる時間を測定し、それと期待値の大小関係で次の2016ブロックの間の難度を決定しました。しかし、ビットコインのマイニングが寡占市場になっていることから、マイニングプールが望むような難度に調整されるようになってしまいました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ビットコインキャッシュ(BCH)とは?その正体に迫る

 

このような問題を放置すると、マイニングというコインの正当性・安全性を保証するための仕組みが、マイニングプールが効率よく収益を出すための仕組みに変質してしまいます。このような懸念を抱いたビットコインゴールドの開発者たちは、マイニングの難度調整の頻度を極限まで小さくすることにしました。

これまでマイニングプールたちは、意図的にハッシュレートを下げることで難度を低く調整させ、難度が低く調整された状態でマイニングを大量に進めて電気代を節約し、これによって難度が上昇するとまたハッシュレートを故意に下げるといった繰り返しにより収益を上げていました。

しかしビットコインゴールドでは、1つのブロックのマイニングが終わるたびに、そのマイニングにかかった時間をもとに次のブロックのマイニングの難易度を決定することになります。このため、仮に一度意図的にハッシュレートを落とすことで次のマイニングの難度を下げても、次の1回分のマイニングの難度が低下するだけで劇的な電気代の節約にはつながりません。

このような仕組みにより、ビットコインゴールドではマイニングプールが余分に権力や収益を得るのを防ごうとしているのです。

ビットコインゴールドに生じた疑惑

このように、一見ビットコインを凌駕する性質をもつビットコインゴールドですが、残念なことにある疑惑が浮上しています。その疑惑とは、ビットコインゴールドのデベロッパーが行っていることは「詐欺」であるという疑惑です。

どこからこのような噂が流れてきたのかは不明ですが、もともとビットコインゴールドの開発者たちがビットコインゴールドのプレマインをしている、という噂が流れていました。プレマインとは、マイニング市場が公開されるより先に内部の人がマイニングを行うことであり、プレマインが行われるということはビットコインゴールドがすでにハードフォークを起こしているということになるので、さすがにそのようなことは考えにくく、あくまで噂として伝えられていました。

ところが、アメリカの大手インターネット掲示板サイトRedditのあるユーザーが、この噂の裏を取り、Reddit上でその報告をしたことから状況が大きく変化しました。

詐欺の疑惑が生じている原因は大きく分けて2つあります。

1つ目は、まったく準備が進んでいないことです。先ほど述べたRedditのユーザーは、プルーフオブワーク(PoW)のアルゴリズムが未導入であること、リプレイ攻撃に対する耐性がないこと、マイニングの難度を変更させるアルゴリズムがまだ実装されていないこと、そして(報告された時点で)21日間ビットコインゴールドのハードフォークに必要なコードに変更が加えられていないことなどを挙げています。(※追記:その後リプレイプロテクションは実装されました)

現在でもこの問題は変わっておらず、Githubのビットコインゴールドのページを見ると、最終更新が24日前のまま止まっています。

Githubより。10月15日現在でも最終更新は止まったまま。

2つ目は、噂で流れたプレマイン疑惑です。プレマインとは、マイニング市場が一般に公開される前に開発者など一部の関係者だけがマイニングを行い不正に利益を得る手法のことですが、ビットコインゴールドでも開発者らによってこのプレマインが行われたと結論づける見方が多いのです。もちろんこれにも根拠があり、Redditにたくさんの証拠が挙げられています。

これらの証拠は主にWayBack Machineというサイトから収集されています。WayBack Machineとは、さまざまなサイトのスナップショットを保存しているサイトで、サイトの過去の状態を見て現在の状態と比較することができます。そして、このWayBack Machineでビットコインゴールドのサイトの過去の状態を見たところ、いくつか矛盾点が見つかったため疑惑が大いに深まりました。

例えば、2017年8月31日の段階でホームページ上にICOという項目があり、「BTCGPU will create 16000 blocks after forked from No 478558th Block.(ビットコインゴールドは478,558個目のブロックからフォークした後、16000ブロックを生成するだろう)」と書かれていました。

WayBack Machineより

最近になって登場したはずのビットコインゴールドですから、ICO配布という過去があったことは知られていません。実際、現在の公式サイトではICOについてはほとんどふれられていません。そうしたことから、ビットコインゴールドの運営は不審だと指摘する人が多く出てきました。

さらに問題なのは、この478,558個目のブロックなのですが、Blockchain.infoによると実は2017年8月1日にマイニングされています。

Blockchain.infoより

実際にハードフォークを起こしたのか起こしていないのかは、これだけでは正直なんともいえません。これと似たようなことがもう一度起こっていて、「2017年10月1日に487,247個めのブロックからハードフォークを起こす」と述べられていましたが、487,247個目のブロックは9月28日の間に生成されていました。

このような状況から、本当にハードフォークを起こしているのか起こしていないのかはっきりせず、その結果、何月何日段階のビットコインの持ち高に応じてビットコインゴールドが付与されるのかについても情報が錯綜しています。

しかし、確実にいえるのは、ビットコインゴールドの運営陣がICO配布を試みた過去があること、そしてそれを隠ぺいしているということです。ビットコインゴールドは公式にはプレマインは行われていないと報告していますが、多くの人がそれに懐疑的な見方をしています。プレマインが実際に行われていたとすると、少なくとも20,000ビットコインにあたるビットコインゴールドが開発者の懐に入っていることになるため、この真偽は今後に大きく関わってきます。

まとめ

現在インターネット上に出回っている意見は、ビットコインゴールドは詐欺だと断定するものばかりです。ビットコインゴールドが実際にハードフォークを起こすのか、そして起こした場合にビットコインゴールドが取引所で扱われ価値をもつことになるのかは、甚だ疑わしいところです。

プレマインを行って不正に開発者が資金を集めていないという保証はなく、どこまでも疑わしいのですが、一方で、HitBTCなどの複数の取引所が公式なサポートを表明していることも事実です。ここから、分岐することが確実視されています。

ただし、ビットコインキャッシュのハードフォークと比較すると、明らかな準備不足ということは否めないので、フォーク後ビットコインキャッシュのような急成長を期待することはできないでしょう。

ビットコインを保有していればビットコインゴールドが付与されるので、ビットコインゴールドの価値が低くてもプラスになるという考え方もあります。

現状ではまだはっきりとしたことはわかりませんが、ビットコインゴールドの開発者がプレマインした可能性が否定できないことと、ビットコインゴールドのサポートを表明している取引所がいくつかあることは事実です。今後サポートする取引所が増えるのかどうか、それが非常に気になるところです。

 
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