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ある仮想通貨を売買しようとしたとき、その市場における取引量が少なくて、思ったような売買ができなかったという経験をした人もいるでしょう。
そんな問題を解決する仕組みを備えた仮想通貨があります。
バンコール(Bancor)です。
市場の硬直が発生しない仮想通貨
バンコールは、イスラエルで開発された仮想通貨で、第二次世界大戦後にイギリスの経済学者であるケインズとシューマッハが世界経済を安定させるための超国家的通貨として提案した同名の制度を元にして開発されました。
取引市場において、売り手と買い手の希望価格が一致しないために取引が成立しない、いわゆる「市場の硬直」の発生を防ぐことを目的としています。
この市場の硬直は、取引高が多い通貨であれば、取引を行いたい人も多くいるので発生しても短時間で解決されますが、地域通貨のような規模の小さいものは取引が成立しにくく、流動性が確保できないために硬直が致命的なものとなる場合があります。
しかし、この問題が解決できれば、グローバル取引市場に参加できる通貨が増え、貨幣取引市場においてロングテール(※)の状態が達成されるのです。
(※)ロングテールとは
一般に、販売業において、販売数の多い品物上位20%が全体の売上の80%を占めるといわれています。
店舗販売においては、物理的な制約のために品数が限られますが、Amazonのようなネット通販では膨大な数の品物を扱うことができるため、販売数の少ない品物も多種扱うことで販売機会を増やし、総売上高を増やすことが可能になります。
この状態を品数を横軸、販売数を縦軸にとったグラフで表すと、グラフの形が長い尻尾のようになることから、ロングテールと呼ばれています。
バンコールの仕組み
バンコールの具体的な仕組みとしては、人が価格を決めるのではなく、数式によって自動的に価格が決まるシステムによって市場の硬直を防ぎます。
まず、バンコールを利用して独自トークン(以下、スマートトークン)を発行する主体は、そのスマートトークンの価値の担保としてイーサリアム(以下、リザーブトークン)を用意しなければならず、そのリザーブトークンのうち、最初に固定準備率として定めた割合のリザーブトークンを常に保有していなければいけません。
この仕組みは、1940~70年代に世界経済で採用されていた金本位制によく似ており、金本位制が、国が発行した紙幣を常に同額の金と兌換(だかん)できることを保証することで価値を担保したのに対し、バンコールは発行したスマートトークンとリザーブトークンの兌換を保証することで価値を担保しています。
しかし、バンコールにおいては、スマートトークンとリザーブトークンのレートは一定ではなく、スマートトークンの発行量や発行主体が持つリザーブトークンの保有量が変動すると数式によって自動的に価格が変動します。
具体的には、現在のレートが1BNT(バンコールの通貨単位)=1ETH(イーサ)であるとき、100ETHを払って100BNTを購入しようとすると、BNTが購入されたことで価格が自動的にBNT高へ推移するため、手に入るBNTは100BNT未満になります。その逆もまた同様です。
このように、スマートトークンとリザーブトークンの間の兌換取引によって、取引相手が存在しなくても価格が自動的に調整され、現在価格での取引が可能になる仕組みです。
取引相手と無関係にスマートトークンとリザーブトークンの量の関係によって価格が決定されるため、他の取引所の価格と乖離(かいり)することもありますが、その場合はその差額から利ざやを得る裁定取引によって調整され、最終的には一致します。
また、リザーブトークンになるのはイーサリアムだけでなく、他のスマートトークンを利用することも可能です。つまり、あるスマートトークンは他のスマートトークンのリザーブトークンになりえます。
これによって、トークン同士のネットワークがバンコールを介して構成されます。
バンコールは、最終的に仮想通貨の世界における基軸通貨としての存在になることを目標としているようです。
もし実現すれば、バンコールとスマートトークンのネットワークによって、無数の通貨がグローバル取引市場において流動性を保って取引されるようになるかもしれません。
注目を集めるも相場は上がらず
このバンコールですが、その注目度の高さから、2017年6月に行われたICOでは3時間で167億円を集める驚異的な記録を作り出しました。
しかし、現在時点(2017年8月25日)では、上場時の価格から大きく下げ、ICO価格さえも割っています。
著名な経済学者の発案を元に開発されていることもあり、注目度が高いのは事実なので、今後の動向に注意したい通貨です。
※仮想通貨(暗号通貨)の投資にかかる最終決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。