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2017年から大きく注目を浴びるようになった仮想通貨(暗号通貨)は2018年に入り、コインチェック事件やTether(テザー)疑惑など、仮想通貨市場全体の信用に関わる出来事によって、国による法規制の必要性が叫ばれ始めました。
その一方で、各国の規制に向けた動向によって市場は大きく揺さぶられ、年初からの1カ月間でほとんどの仮想通貨が50〜60%もの大暴落を記録しました。
法規制はどこまで強化されるのか。法整備によって仮想通貨市場はよりいっそう成長するのか、それとも収縮していくのか。各国の現状から今後の仮想通貨市場を読み解きます。
世界で進む仮想通貨規制
【ドイツ・フランス】
ドイツ中央銀行のヨアヒム・ビュルメリング理事は「仮想通貨に対する規制は国ごとではなく、国際的に取り組む必要がある」という発言をし(1月16日)、フランス中央銀行総裁や理事は、EU加盟国で策定中の仮想通貨利用ルール作りを急ぐだけではなく、国際的なルールも作るべきだと発言しています。
フランスのルメール経済財務相は、「われわれは安定した経済を望む。投機やビットコインに起因する潜在的な金融転換によるリスクを拒否する」と述べ、仮想通貨規制の作業部会を結成することを発表しました(1月16日)。
【G20】
さらに、ドイツとフランスが開いた共同記者会見(1月18日パリ)で、今年3月にアルゼンチンで開催されるG20で仮想通貨へ国際的な規制を呼びかける旨が発表されました。フランスのルメール経済財務相は「ビットコインのリスクの分析や規制についてドイツとともにG20参加国に提案したい」と述べています。なお、仮想通貨の問題がG20で議題に上るのは今回が初とされています。
【ダボス会議】
このように仮想通貨規制に対する国際的な協調の呼びかけが強まっているなかで開かれた世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」(1月23日スイス)では、仮想通貨やブロックチェーンに関する議論が行われ、ノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・E・スティグリッツ氏は、仮想通貨は脱税やマネーロンダリングなどの犯罪に使われることが主要目的であるとし、「ビットコインは必要ない」と発言しました。
【IMF】
IMF(国際通貨基金)もまた、仮想通貨の規制に対し国際的に協調するよう求めています。
ジェリー・ライス報道官はブルームバーグ紙に対して、マネーロンダリングや詐欺のリスクを懸念するとともに、仮想通貨の価格高騰のリスクについても警告しています(1月18日)。「資産価格が急激に上昇すると、仮に市場参加者が購入のためにお金を借りている場合、リスクが累積する可能性がある。そのため人々がリスクを認識し、必要なリスク管理の措置を講じることが重要だ」と話しました。
【アメリカ】
アメリカでは、仮想通貨の取引自体は認められています。しかし証券取引委員会(SEC)は、ICOについては有価証券とみなして厳しく監視していて、ボラティリティの大きい仮想通貨のETF(上場投資信託)承認にも否定的です。
事実、1月30日にSEC は、テキサス州に拠点を置くアライズバンクがICO史上最高となる6億ドル(約653億円)余りを調達したICOについて、虚偽の情報を提示して個人投資家から不正に資金を集めた有価証券詐欺であるとして、全資産凍結の裁判所命令を出しました。
SECのジェイ・クレイトン議長は、仮想通貨とICOは分けて考えるべきで、ICOの資金調達は有価証券と同様にSECの統括下に置かれるべきとの見解を示しています。その一方で、「新たな市場への投資にはリスクが付随するが、投資家はこのような投資機会を得てしかるべきだ。また、投資家に助言するコンサルタントや法律家は、SECが定める法律、規制、ガイドラインをもとに適切なアドバイスを行い、投資家保護に努めてほしい」と、仮想通貨やICOに対して前向きな姿勢も示しました。
【中国】
中国人民銀行は2月5日、金融リスクを避けるため仮想通貨取引、ICOに関わるすべてのウェブサイトを取り除く意向を表明しました。中国は昨年から仮想通貨への規制を強めてきましたが、これにより今後中国人は国内だけでなく、海外取引場への一切のアクセスが不可能となる可能性があります。
この表明を受けて大手取引場のバイナンス(Binance)は、中国本土のユーザーに対してのサービス提供を取りやめることを発表しました。
仮想通貨は世界的に規制強化されていく
仮想通貨に対する規制や考え方は、各国によってさまざまに異なります。
日本においては、新技術推進と利用者保護の観点から規制が進められ、世界的にみて最も仮想通貨フレンドリーな国になっています。
しかし、世界的には確実に規制強化の流れが来ています。それは仮想通貨がまだ投機的なものであり、詐欺やマネーロンダリングなど犯罪の温床となっている事実が懸念されているからです。
ただし、ブロックチェーンや仮想通貨の技術そのものを評価する声は大きいため、仮想通貨の未来はその有効的な使われ方にかかっています。すでに三井住友海上や三井物産、はたまたNASAまでもがブロックチェーンを活用した技術開発に取り組んでいます。
今後は、仮想通貨が安全に使われる環境を整えていくために、各国による法整備と国際協調が進められていくでしょう。しかし中央管理者がいない仮想通貨に対して国際的な規制を進めるのは、従来のやり方では難しいと考えられます。
そして私たち投資家の立場からすると、法規制が進み価格変動幅が小さくなると、投資リスクが減る分、これまでのような異常に大きな利益は出なくなるでしょう。つまり、証券市場のようにコントロールされた市場に移行していくものと考えられます。
今後、世界はどのように仮想通貨を受け入れていくのか。そして、コインチェック事件を受けて日本は規制強化に方向転回するのか。
規制が強化されるたびに仮想通貨市場に激震が起こり価格が暴落することは、これまでの歴史が証明しています。
今後の各国の規制動向に注目です。