仮想通貨のSTOとは?ICOとの違い、STOの事例、将来性を解説
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今、仮想通貨市場で「STO」という、ICOに代わる新しい資金調達方法が注目を集めています。
STOの特徴や、従来のICOとの違いを解説しつつ、過去に行われたSTOの実績から今後行われる予定の期待のSTO、STOにおけるトークンの購入方法まで、一挙に解説していきます。
仮想通貨のSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)の特徴とは
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは、これまで主要な資金調達方法であったICO(イニシャル・コイン・オファリング)に代わる、新しい資金調達方法です。
その特徴は大きく3つあり、
- 金融商品として法規制に合わせて販売される
- 従来の株式をトークン化して仮想通貨と同じように取引ができる
- ステーブルコイン(ペッグ通貨)との相性が良い
ということが挙げられます。
それぞれについて、1つずつ詳しく解説していきます。
仮想通貨のSTOの特徴①法規制に合わせて行われる
STOは、金融商品の1つとして、法規制に則って行われることが最大の特徴です。
例えばアメリカであれば、米国SEC(証券取引委員会)が設けているフレームワークに従ってトークンの販売が行われます。
このため、国が定める規制をクリアできる有望なプロジェクトのみがSTOを行えることになり、投資先としての安全性が向上します。
そして、安全な投資先であるということが認められれば、機関投資家の参入も見込むことができ、より多くの資金を集められる可能性が高まります。
仮想通貨のSTOの特徴②株式のトークン化ができる
STOの特徴として、「株式のトークン化ができる」というのも重要な点です。
通常、株式の取引を行うためには、東京証券取引所などの証券取引所を利用する必要があり、証券取引所が営業している時間は決まっているので営業時間外には取引を行うことができません
しかし、STOでは株式をトークン化して置き換えることで、仮想通貨の長所である「24時間365時間取引可能」という点を活かすことができるようになります。
つまり、STOによって株式をトークン化することで、株式の取引が24時間365日いつでも行えるようになるのです。
仮想通貨のSTOの特徴③ステーブルコインとの相性が良い
STOの3つ目の特徴は、ステーブルコインとの相性が良いということです。
ステーブルコインとは、ペッグ通貨とも呼ばれ、テザーなどに代表される、法定通貨と1:1で価格が固定された仮想通貨のことです。
ICOでは、イーサリアムベースで作られたERC20トークンの販売が主流ですが、イーサリアムのボラティリティの大きさがネックとなって機関投資家が参入しづらくなっている側面があります。
その点、ステーブルコインであれば、常に法定通貨と同じ価格になるように固定されているので、法定通貨ベースで考えることができ、イーサリアムよりも安定性が高いので、機関投資家が参入しやすくなるというメリットがあります。
仮想通貨のSTOとICOの違いは?
ここまで、仮想通貨のSTOの特徴について解説してきましたが、ICOとはどのような点が異なるのでしょうか。
こちらについても、順を追って解説していきます。
適正価格が計算しやすいSTO、投機的な面が強いICO
STOは、株式のように金融商品として販売されるため、株式と同じく、株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)のような共通の指標でもって現在の価格が適正価格よりも高いのか低いのか、他の株式(トークン)と比べて割高なのか割安なのか、という判断ができます。
一方、ICOで販売されるトークンにはそういった評価のための指標がなく、トークンの価格が適正なのかどうかが判断できません。さらに、ICOで調達される資金の上限は、そのプロジェクトが必要とする金額を元に決められているため、市場の評価ではなく開発チームの都合で販売額が決められてしまいます。
そうした事情から、ICOは価格の評価がしづらく、非常に投機的な側面が強いものになってしまっています。
安全な投資対象として適切な評価がしやすいSTOと、価格の評価が難しく投機的な面が強いICOという対称的な関係があります。
参加に一定の条件があるSTO、誰でも参加できるICO
STOは、金融商品として法規制に則って行われるため、法規制の内容次第では、トークンの購入のために、年収や保有する金融資産の額などの条件が設けられる可能性があります。
つまり、一般的な個人投資家はトークンの購入すらできないということがあり得ます。
一方、ICOは、購入するトークンの最低量を定めている場合もありますが、基本的には参加に条件はなく、誰でも参加してトークンを購入することができます。
どちらが良いか悪いかは別として、STOとICOではSTOの方が参加のハードルが高くなっています。
法規制を順守しているSTO、玉石混交で詐欺も多いICO
STOは、例えば米国SECのフレームワークのように、厳しい法規制をクリアしないとトークンの販売ができません。そのため、法規制をクリアできる程度には十分に有望なプロジェクトのみがSTOを実施でき、それ以外のプロジェクトは自然と淘汰されます。
一方、ICOは十分な法規制が敷かれていないため、莫大な資金を調達してしっかりと開発を進める有望なプロジェクトから、資金を集めるだけ集めて開発を放棄する詐欺プロジェクトや、詐欺のつもりはなくとも開発がとん挫して終了してしまうプロジェクトまで様々なプロジェクトがあり、玉石混交なのが実情です。
有望なプロジェクトを見極めることができればICOの方がリターンは大きいかもしれませんが、安全な投資先として考えるなら確実にSTOに軍配が上がるでしょう。
過去に行われたSTOの実績
過去に行われた仮想通貨のSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)の実績として大きなものは、アメリカの電動スクーターのシェアリングサービスである「SPIN」が挙げられます。
「SPIN」は、2018年7月にSTOを行い、約1億2,500万ドル(約1,37億円)を調達しました。
このSTOは、販売されるトークンの価格が「SPIN」の売上によって裏付けされており、トークンを購入する投資家は、「SPIN」の売上の一部を受け取ることができる仕組みになっています。
この仕組みは、ちょうど企業の株式を購入すると配当として利益の一部を受け取ることができることに似ています。
また、このSTOには、一定の条件を満たす適格投資家のみが参加できるようになっており、個人投資家でも小額から参加できるICOとは大きく異なっています。
「SPIN」のSTOで販売されたトークンは、2019年1月現在、仮想通貨取引所への上場はされていないようですが、製品であるスクーターの開発は順調に進められているようです。
仮想通貨のSTOへの参加・購入方法
STOに参加し、トークンを購入するためには、通常の仮想通貨取引所ではなく、STOプラットフォームを利用する必要があります。
Polymath(ポリマス) イーサリアムベースのSTOプラットフォーム
STOプラットフォームとして代表的なのは、Polymath(ポリマス)というイーサリアムベースで作られたプラットフォームです。
PolymathでSTOに参加し、トークンを購入するためには、Polymathに自身の登録を行い、本人確認を受ける必要があります。また、この際厳しい審査が設けられており、この審査を通過した人のみがSTOに参加することができ、またSTOで購入したトークンを取引することができます。
つまり、Polymath上でトークンを売買できるのは、Polymathで本人確認を受け、厳しい審査を通り抜けた人同士でだけということです。
Coinbase(コインベース) 米国SECから承認を受けた仮想通貨取引所
もう1つのSTOを実施できるプラットフォームは、アメリカの大手仮想通貨取引所であるCoinbase(コインベース)です。
Coinbaseは、元々は通常の仮想通貨取引所でしたが、2018年7月に米国SECから有価証券の取り扱いの認可を受けており、このことからSTOを実施することができるようになりました。
Coinbaseは、日本の三菱UFJフィナンシャルグループと提携して、2019年中に日本進出を計画しているため、日本からSTOに参加するならCoinbaseが日本進出するのを待つのが良さそうです。
今後予定されている期待のSTO
今後のSTOの動向としては、新たなSTOプラットフォームである「tZero」が1月26日までにサービスの開始を予定しており、期待が集まっています。
「tZero」では、同社の株式の代わりになるトークンが上場される他、現在60社とSTOによるトークンの発行について協議中とのことです。
その60社の中で、次にSTOが行われるのは、恐らく自動車ベンチャー企業の「Elio Motors」になるだろうと「tZero」のCEOであるPatrick Byrne氏が話しています。
仮想通貨のSTOについてまとめ
仮想通貨のSTOは、ICOよりも安全で信頼性の高い投資先として、仮想通貨市場で注目を集めている期待の資金調達方法です。
STOを実施できるプラットフォームはまだ数が少ないですが、今後はその将来性の高さから、多くの企業や仮想通貨取引所がSTOに参入していくと考えられます。
2019年はICOに代わってSTOが主流となっていく可能性も高く、今後の動向に注目が集まります。