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リップル:モジャループとILPの仕組み

2017.11.13
リップル:モジャループとILPの仕組み

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10月16日から18日にかけて、トロントにてリップル(Ripple)のイベント「Swell(スウェル)」が開かれていました。リップルに限らずイーサリアムなどの仮想通貨もそれにまつわるイベントがよく開催されていて、こういったイベント近辺ではその仮想通貨の価格が上がることが多いため、今回のSwellも開催前から大きく注目を集めていました。

リップルが突如カウントダウンを開始し、それがゼロになると同時にSwellに関する告知を始めるなどハードルを上げるような演出で、実際のイベントが開催される前から大きな話題となっていました。そこで初日にあたる16日に発表されたのが、この「モジャループ(Mojaloop)」です。

それほどまでに反響を呼ぶと期待されていた「Mojaloop」ですが、どんなものなのでしょうか。

モジャループとは

「moja」とはスワヒリ語で「one」を意味します。つまり、「Mojaloop」は「1つのループ(輪)」という意味の造語です。

Mojaloop公式ホームページが開設されていて、そのトップには、

Mojaloop is open-source software for financial services companies, government regulators, and others taking on the challenges of interoperability and financial inclusion.

(Mojaloopは金融サービス会社、政府で金融の取り締まりの担当者やその他の人々などが金融サービスの相互運用性や非富裕層の金融機関への取り組みなどに挑戦するためのオープンソースのソフトウェアである)

と書かれています。

これらの内容だけではよくわからないので、他に記載されていることや公式動画の内容などを総合すると、モジャループとは次のようなプロジェクトになります。

・所得が十分な水準に達していないことが原因で銀行口座を開設することができない人たちが世界中には約20億人います。このような人たちの決済方法を現金からデジタル化する事業である。

・現行のデジタル決済サービスには2つの難点があり、1つは高額な手数料が必要となること、そしてもう1つはサービスが小規模であること。サービスのプロバイダーはシステムを自ら構築する必要があるため資金が必要になり、高額な手数料をユーザーに課さなければならない。さらに、複数のサービス間に互換性がないため、汎用的ではない。

・モジャループの強みには、Open Source(オープンソースであること)、Secure(安全性)、Interoperable(さまざまな機関で運用可能であること)、At Scale(大規模運用が可能であること)が挙げられる。

つまり、モジャループは貧しい人でも使用可能な、デジタル決済でブリッジ通貨的な役割を果たすサービスです。

モジャループの信頼性

モジャループの中心となっているのがビル&メリンダ・ゲイツ財団です。世界で最も有名な億万長者の保有する世界最大の慈善団体をバックに抱えているため、資金難で開発がストップする心配はありません。

このような非常に大きな財団が提携する相手に選んだのがリップルです。リップルのILP(インターレジャープロトコル)という技術をモジャループに組み込むのが狙いです。ILPという技術が安全性・スケーラビリティなどの観点で評価された結果でしょう。

それでは、そのような仮想通貨界の外からも高い評価を受けるILPとは、どんな技術なのでしょうか。

リップルの送金システムについて

IOUとILP

リップルはよく中央集権型といわれます。それはリップルの承認方式が中央集権型であるPoC(Proof of Consensus)を採用しているからです。しかし、ネットワークはP2Pを中心とした分散型のネットワークのため、送金を行う際は送金を行うノードと送金を受けるノードの間で多数のノードを媒介することになります。

PoCとは?

validatorと呼ばれるごく一部の限られたユーザーなどが取引を承認することができ、validatorどうしが互いを認可しあうことで一連のグループが形成されている。現状では、このvalidatorのグループの大半がリップル社の関係者から構成されていることから、リップルは中央集権的だといわれることが多い。このvalidatorたちが二重支払いのないことを確認すると、取引が成立し台帳に記録されるため、PoWのようなマイニングにあたる作業が存在しない。これによって手数料がかからず、取引の成立までの時間が短く抑えられている。

IOUやILPというのは、このようにP2Pネットワークの中で多数のノードを媒介する際にセキュリティを確保する方法のことです。IOUはこのうち旧式のシステムのことで、ILPはIOUに見つかった欠点を補完した新型のシステムです。

IOUの仕組み

フィアット(法定通貨)や電子マネーなど、さまざまな形で金銭的価値を含むものがリップルのネットワークに入ってくると、「ゲートウェイ」と呼ばれるネットワーク内で銀行のような働きをしている機関が、借用証書を発行します。金銭的価値を貨幣媒体で安全に送信しようとすると多額の手数料が必要となるので、この代わりに金銭的価値を借用証書の形で送信することで手数料を低く抑える仕組みです。

この借用証書はデータの形でオンラインで送受されるので、借用証書の送信や受信自体に費用はかかりません。この借用証書のことをIOU(”I owe you.” 「私はあなたに借りがあります」に由来。イシュアランスとも呼ぶ)といい、IOUを利用した送金システムのこともIOUと表現されることがあります。

信頼性の高いユーザーが「ゲートウェイ」になることが想定されていて、「ゲートウェイ」はいつでも自身の発行したIOUと等価の法定通貨や電子マネーなど、ネットワーク外の貨幣またはそれに類するものへ交換する義務を負います。

例えば、Xさんが「ゲートウェイ」であるとすると、Xさんの発行した1万円分のIOUは、Xさんに頼めば1万円支払ってもらえるという保証になります。これにより、実質的にIOUにも金銭的価値が付与されるので、リップルのネットワークの中で信頼性の高い送金が可能となっていました。

 IOUの仕組み

しかし、IOUには大きく2つの問題点がありました。

①ゲートウェイの信頼性に大きく依存
信頼性の低いゲートウェイがIOUを踏み倒してしまう可能性があり、また、支払い能力のないゲートウェイが過剰なIOUを発行することも可能でした。実際に、日本ではこのIOUの空発行による詐欺事件があり報道されました。

②コネクタの信頼性
さらに、IOUがP2P通信で送信される途中で、取引を経由しているノードに盗み取られることも技術的には可能でした。IOUは送金者から受金者のもとへと一方向に送られるため、途中のコネクタと呼ばれるP2P通信をつなぐノードがIOUを受け取った後でネットワークから外れると、IOUが途中のコネクタから次のコネクタへと送信されることなく、途中でIOUを着服することが可能でした。

ILPの仕組み

このようなIOUの欠点を解決すべく、「ゲートウェイ」という役職を設けるのではなくプログラムによって取引を管理するシステム、それがILP(インターレジャープロトコル)です。

ILPは、送信者とコネクタ、コネクタとコネクタの間、コネクタと受信者の間に「レジャー(Ledger)」と呼ばれるエスクロー(第三者的に取引を仲介することで取引の信頼性を高める仕組み)を設けました。詳しい仕組みは下の図をご覧ください。

ILP-1

1. 送金者から受金者までの情報の経路が決まると、そのうちで最も受金者に近いコネクタから受金者への送金がレジャーにより行われます。そして送金が行われたという情報はインターレジャープロトコルへと伝えられます。送金者が受金者に対して送金したい額をX円とすると、この過程で、受金者がX円を受け取り、受金者に最も近いコネクタがX円を送金します。

2. 情報を受けたインターレジャープロトコルは、その情報を送信したレジャーに隣接したレジャーに対して送金を行うよう指示を送ります。これにより、その送金をしたコネクタに1つ前のコネクタから送金が行われます。送金が行われると、その情報が再度インターレジャープロトコルに伝えられます。

3. 4. 同様に、インターレジャープロトコルからの次のレジャーへの働きかけ、支払いを行ったコネクタに対する1つ前のコネクタからの送金、インターレジャープロトコルへの送金完了のフィードバックの流れが繰り返されます。

5. 送金完了の情報を受けたインターレジャープロトコルは、最後に1つ残ったレジャーに指示を送ります。その結果、送金者本人から4で送金を行ったコネクタへ送金が実行されます。この送金完了の情報がインターレジャープロトコルに届くと、送金者から受金者への送金という一連の流れが終了します。

これらの送金の差し引きの額を計算すると、各コネクタは送金と受金を一度ずつ行なっているため差し引きゼロとなっているのに対して、送金者では一度の送金、受金者では一度の受金だけをしていて、各自の所持金の増減は送金者でーX円、受金者で+X円です。そのため結果的に、送金者から受金者へX円の送金が行われたことと同じになります。

インターレジャープロトコルというレジャーをまとめて管理する仕組みにより、各コネクタが次のコネクタや受金者への送金を行った際にのみ前のコネクタや送金者からの入金が行われるような仕組みになっています。

送金を行わなければ入金が行われないので、コネクタによる持ち逃げが不可能ということに加え、ゲートウェイも不要なので詐欺IOUが配布される心配もないというメリットがあります。イメージとしては、人間が介在すると信頼性の低下する部分をプログラムで置き換えているという点で、イーサリアムのスマートコントラクトに近いものです。

なお、現在ではこのILPを用いた送金過程でXRPを使うことも可能になりました。詳しくは下のリンクをご覧ください。
https://ripple.com/insights/ripplenet-grows-to-over-100-financial-institutions/

なお、このようにILPとXRPが融合されたことにより、さらなるリップルネットワークの進化が期待されています。

このようなところも含めて、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から評価を受けたのでしょう。

 

まとめ

モジャループとは、世界でも貧しい人が銀行口座の代わりになるものを持てるために考案されたオープンソースのサービスです。ビル&メリンダ・ゲイツ財団が中心となって推進しているなど信頼性という点でも優れたサービスですが、実用化には透明性の確保および手数料の低廉化が必須です。

このような厳しい条件を可能にしているのが、リップルのILP(インターレジャープロトコル)という技術です。これは旧来のIOU方式の持っていた欠点を解決するとともに、人による管理からプログラムによる管理を果たしリップルネットワークの信頼性をさらに盤石にしました。

ILP導入以降、長らく重大視されてきたXRPがILPで使えるのかという問題も、つい先日技術的に可能であることが示されたこともあり、今後もリップルの進化が期待できそうです。

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