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各国のICO規制と仮想通貨の法規制

2017.09.07
各国のICO規制と仮想通貨の法規制

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2017年に入り仮想通貨の価格が急上昇し、注目を集めています。すでに仮想通貨やブロックチェーン関連の取引に関して規制を設けている国もありますが、今後、法規制はどのような方向へ向かうのでしょうか。各国の法規制を確認しながら、日本における仮想通貨への法規制の動向を考察します。

 

中国がICOを全面的に規制

2017年9月4日、中国人民銀行はICOが違法な資金調達方法であるとして、今後のICOを全面的に禁止すると発表しました。これを受けて仮想通貨の価格は一時急落し、米情報サイトによると仮想通貨全体の時価総額で約2兆円分がなくなりました。

中国政府が規制に乗り出した背景には、ICOによる詐欺被害防止が目的であると思われます。ICOは仮想通貨を使って安い手数料で効率よく資金調達できる一方で、資金集めの詐欺が横行する面をもつのも事実であるからです。

 

アメリカの法規制

ニューヨーク州は、2015年から仮想通貨事業を行うには「ビットライセンス」の取得を義務付けています。しかし、ライセンス取得のために厳しい取得条件を満たす必要があることやコストの高さに反発が強く、多くの大手取引所が次々と撤退しています。現在までにこのライセンスを取得できた企業はCoinbase、Rippleなど5社のみです。

ワシントン州でも、2017年7月23日、仮想通貨に対する新しいガイドラインと規制が施行されました。この規制は、ニューヨーク州の「ビットライセンス」に似たもので、これを受けて仮想通貨交換サービスを提供するPoloniexとBitfinexはワシントン州へのサービスを停止すると宣言しました。

このような各州の規制を受けて、大手取引所はそれらの州でのサービス停止を次々と発表しています。仮想通貨に対して万全な規制を施す州もある一方で、ブロックチェーン関連の取引を非課税にする州もあるのが現状です。仮想通貨の普及スピードに法整備が追い付いていないこと、州ごとに金融の規制や法律が定められているアメリカの制度により対応は州によって異なっています。

 

その他の国々の姿勢

シンガポールはロンドン、ニューヨークに次いで金融の活発な都市です。シンガポールの中央銀行であるシンガポール金融管理局(MAS)では仮想通貨を「資産」と分類し、規制は最小限に留める姿勢です。MASは昨ブロックチェーン技術を用いた送金システムを「R3コンソーシアム」やデロイト社と共に進めています。そんなシンガポールも2017年8月1日、証券先物取引法の対象となるトークンのICOを規制する考えを発表しました。これにより多くのICOが規制されますが、一部のものは規制対象外となることも同時に発表しており、その基準は曖昧です。また、当局は仮想通貨自体の規制はしないという姿勢も強調しています。

インドでは2016年、政府が高額紙幣を廃止したことで経済が混乱に陥りました。そのため現金の代わりにビットコインが急激に注目され始め、利用者は2017年春までに250%も増加しました。このような利用者急増を受け、政府は今年4月から仮想通貨規制の是非を問う諮問委員会を設置しました。これまでビットコインは違法という姿勢を貫いてきましたが、合法化に向かう兆しをみせています。IT大国インドではブロックチェーン技術を駆使する優秀な若者が多い一方で、詐欺による被害が拡大しています。これから法整備を進めながら、国の強みをどう生かすかに注目です。

日本では2017年4月にいわゆる「仮想通貨法」が施行されましたが、これは国家が仮想通貨を支払手段の一つと定義した世界初の試みです。これにより仮想通貨の取引所を運営するためには、政府に申請書を提出することが必要となりました。つまり取引所が登録制になったということです。三菱東京UFJ銀行の「MUFGコイン」に始まり、仮想通貨に対する関心が高まっていることが見受けられます。
また、現在仮想通貨は「資産」と定義されています。税金に関しては、仮想通貨を使用して物品を購入した場合、消費税はかかりませんが、仮想通貨を使用することで生じた利益は所得税の課税対象となります。この仮想通貨を使用することにより生じる損益(日本円または外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。(所法27、35、36) [参照:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6201.htm] 例えば、ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン)とのトレードによりビットコインを増やした場合、その利益分が譲渡所得または雑所得(事業所得)になると考えられます。仮想通貨への投資による資金流出や国を超えて取引が行われる仮想通貨に、日本政府がどこまで規制をするのか今後の動向に注目が必要です。

韓国は、2017年10月までに仮想通貨に関する規制の枠組みを完成させ執行することを目指しています。仮想通貨取引所の本人確認システムを厳格化することや、銀行に対して仮想通貨に関連する違法性が疑われる取引や口座記録の義務化などを取り入れる予定であり、全体的に厳しく規制するとみられます。規制の厳格化は、仮想通貨取引に違法性が観測された場合にも及びます。金融委員会は仮想通貨について、現時点では通貨としても金融商品としても認めない姿勢で、企業がICOを通じた資金調達に違法性が認められる場合は罰則を科すとも示唆しています。韓国がこのような厳しい法規制をしようとするのは、2017年7月に自国の仮想通貨取引所Bithumbがハッキングされ、約1億2000万ウォン相当の仮想通貨が盗まれたことも大きく関係しているでしょう。

香港の証券先物委員会(SFC)は、トークンを発行して資金調達するICOに対しては証券として扱う可能性を示唆しました。また、2017年9月4日、同委員会はICOで調達する仮想通貨の量を規制・制限するとも警告しました。ICOは世界的に無視できないレベルに達しており、その実態を見極めて審議を行う必要だという見解を示しています。しかし、中国のような詐欺行為撲滅のための規制というより、投資家保護の観点から法整備を検討しているためICO自体の否定はしていません。

ロシア政府もICOの規制に向けて動いていますが、そこには金融大国として仮想通貨市場を牽引したいという狙いが伺えます。現在マイニング事業は中国がリードしていますが、ロシアはその中国主導のマイニング事業の構図を崩して、マイニング事業とブロックチェーン技術で金融大国となることを目指しています。ロシアのマイニングファームRussian Mining Coinは、次世代のマイニング機器を研究開発するプロジェクトを開始しました。ロシア政府もこのプロジェクトを後押ししています。ロシアは、金融大国への歩みを進めたい狙いがあるので、ブロックチェーン技術開発のサポートの足かせにならないような法整備を慎重に進める姿勢です。

カナダでは、カナダ証券管理局(CSA)がICOに対して監督する必要があることを明らかにしました。ホワイトペーパーなどの目論見書や、登録の要件などを満たしているのかといったところに注目するとみられ、シンガポールや米証券取引委員会と同様に、一部のトークンに規制をするものと思われます。

 

まとめ

世界中が関心を寄せる仮想通貨。各国が自国の状況に合わせて規制を始めました。ここで注目したいことは、さまざまなものがボーダーレスに行き来するなかで、仮想通貨の取引に関しては必ずしも先進国が有利とは限らないことです。
今後も各国の動向に注目していきましょう。

 

 

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