SegWit2xコインがビットコインの本流になる?

2017.10.31
SegWit2xコイン

現在、11月15日前後に予定されているビットコインのハードフォーク「SegWit2x」が本当に実行されるのか、そしてハードフォークによってまた新たなコイン「B2X」が本当に誕生するのか、話題が沸騰しています。

ここでは、ビットコインのハードフォーク「SegWit2x」をめぐるさまざまな疑問を検証していきます。

コインの名称について

最初にお断りしておきます。ハードフォークによって誕生するとされるコイン「B2X」という名称(ティッカー)は、実は正式名称ではなく、ごく一部の取引所がそのような名称で取り扱うことを表明しているにすぎません。

そもそも、取引所によってはSegWit2xによってハードフォーク後のコインを正式なビットコイン(BTC)として取り扱う可能性もあり、その場合にはB2XがBTCとして扱われることになります。

この記事では中立的な立場から記事を書くため、どちらにもBTCという名称を使いません。現在のBTCは「レガシービットコイン」、11月に誕生するコインを「ビットコインSegWit2x」、メインチェーンだと取引所に決められたビットコインのことを「BTC」と表記することにします。

ビットコインSegWit2xとは

ビットコインSegWit2xとは、NYA(ニューヨーク合意)で決められたことに従ってビットコインのトランザクションにSegWitを取り入れた後、ブロックサイズを2倍にしたビットコインのことです。これはレガシービットコインとは大きく異なり抜本的な仕様の変更が必要になるので、ハードフォークを伴います。

レガシービットコインのコアデベロッパーは、NYAの枠組みに含まれていなかったため、当然その内容に賛成しておらず、SegWit2xのハードフォークに反対しています。これにはASIC耐性などの問題が絡んでくるのですが、詳しい事情はこちらの記事をご覧ください。

SegWit2xとは? 8月1日危機の経緯から今後の行方を解説

しかし、ビットコインキャッシュ(BCH)のハードフォークの際は、レガシービットコインのコア派が公認していたわけでもないのに問題は生じませんでした。今回もそのようになってくれれば混乱は避けられるのですが、ビットコインキャッシュのハードフォークとは大きく違うことが1つあります。

それは、ビットコインSegWit2xのハードフォークを引き起こそうとしているマイニングプール側が「自分たちが真のビットコインである」という立場をとっていることです。ビットコインキャッシュのハードフォークの際は、ビットコインキャッシュ側は「自分たちはレガシービットコインから分裂したアルトコインである」という立場で、リプレイ攻撃を防ぐための仕様の変更をビットコインキャッシュ側が加えました。

リプレイ攻撃は、仕様の同じ2本のチェーンが存在するとき、一方のチェーンで行われた取引が予期せず他方のチェーンで行われるような攻撃のことです。これを回避するためには、新たに分岐する側のチェーンがトランザクションの認証方法を一部変更することで、一方のチェーンの取引が他方のチェーンでは規定の条件を満たさず承認されないようにします。

しかし、今回はマイニングプール側が「自分たちが行っているのはレガシービットコインからの分岐ではなく、レガシービットコインのアップグレードだ」という立場をとり、リプレイ攻撃の対策を部分的(オプトイン)にしか行いませんでした。これによりハードフォーク直後の取引が一部不正に改ざんされてしまう可能性があります。

現在の勢力関係

さて、リプレイ攻撃対策をあえてしないことで攻勢に出ているビットコインSegWit2xですが、レガシービットコインとビットコインSegWit2xの勢力関係はどうなっているのでしょうか。

ノードの動向

ビットコイン・ブロックチェーンのユーザーであるノードが、レガシービットコインとビットコインSegWit2xのどちらを支持しているのか、大まかな現状をみてみましょう。

ビットコインSegWit2xのノードbtc1のgithubの一部ページ(SegWit2x Announcement and Information)上でbtc1と互換性のあるノード・互換性のないノードが紹介されていますので、そこからノードの動向を探ることができます。

ここから、bitcoin unlimitedとbitcoin classicの2つのノードはbtc1と互換性があり、bitcoin coreとbitcoin UASFの2つのノードはbtc1と互換性がないことが読み取れます。

そこで、btc1、bitcoin unlimited、bitcoin classicの3つのノードの利用者はビットコインSegWit2x派、bitcoin core、bitcoin UASFの2つのノードの利用者はレガシービットコイン派という前提に基づき、ノードの個数を比較してみましょう。

coin.danceスクリーンショット

coin.danceより/2017年10月30日

coin.danceの情報に従えば、現状(2017年10月30日)レガシービットコイン派の個数が7699個(7414+285)あるのに対して、ビットコインSegWit2x派の個数は1546個(790+663+93)個と、大きな差がついています。

この点から、レガシービットコイン派のノードのほうが圧倒的に多いと推測できるため、ユーザビリティ向上のためにはSegWit2xハードフォークが必要だとしても、大半のユーザー(ノード)に望まれている仕様変更ではないといえます。

マイニングプールの動向

ノードが望まないSegWit2xハードフォークですが、その実現性は高いと考えられます。なぜなら、多くの大手マイニングプールが、SegWit2xハードフォークをしたほうが「儲かる」と考えているからです。

coin.danceスクリーンショット

coin.danceより/2017年10月30日

上の図のように、8割以上のマイニングプールがSegWit2xに賛成するというシグナルを発しています。

下の図を見ると、より差が歴然とするでしょう。

coin.danceスクリーンショット

coin.danceより/2017年10月30日

画面内に表示されているブロックでSegWit2xをサポートしていないブロックはF2Pool、Slush Poolの2つのマイニングプールがマイニングしたものだけです。実際、いわゆる大手マイニングプールの中でSegWit2xをサポートしていないマイニングプールは、この2社に絞られます。

ASIC BOOSTによる電気代の節約など、マイニングプールをビットコインSegWit2xに向かわせる要因はたくさんありますが、そのうちのひとつが一部取引所の対応です。

取引所の動向

SegWit2xを取り決めたNYAの中心メンバーはマイニングプールと取引所です。NYAのメンバーにレガシービットコインのコアデベロッパーたちは含まれていません。そのため、SegWit2xのハードフォークを強引に推し進める姿勢に対して、コアデベロッパーを始めさまざまなユーザーが批判をしています。

このような状況のなかで、SegWit2x Statusによると現在NYAに参加していたマイニングプール・取引所のうち約32%が撤退を表明し、約68%が残留を表明しています。この3分の1という厄介な数字のせいで、取引所によって立場が異なり、まだ先行きがはっきりしません。

現段階で取引所が取っている態度は大きく分けて次の3つです。

  1. レガシービットコインを正式なBTCとして扱い、新しく誕生するビットコインSegWit2xはアルトコインとして扱う
  2. レガシービットコインとビットコインSegWit2xのうち、ハッシュレートの高いほうを正式なBTCとして扱う
  3. まだ立場を鮮明にしてしない

つまり、新しく誕生するビットコインSegWit2xのハッシュレートがレガシービットコインのハッシュレートを上回った場合、取引所によって正式なBTCとされるコインが変わってくるという事態が生じます。

取引所によってビットコインSegWit2xとレガシービットコインの正当性の評価が変わることになると、当然取引所によりビットコインSegWit2xとレガシービットコインの価格が大きく変わってきます。

さらに、ハードフォークを直前に控えると投機目的でビットコインSegWit2xを購入する人が増えることも考えられます。こうなるとビットコインSegWit2xがレガシービットコインに取って代わることも考えられないわけではありません。

B2X先物取引量chart

coinmarketcap.comより/2017年10月30日

実際、突然ビットコインSegWit2xの先物取引の取引量が増え出すようなことも起きています。

加えて、ビットコインSegWit2xの先物取引の取引額はかなり高く、ハードフォークまでまだ時間があるので同じ条件での比較はできませんが、BTC建てでBCH(ビットコインキャッシュ)とほぼ同額です。円建てで考えると現在のビットコインSegWit2xは分岐前のBCH先物価格に比べてかなりの高値がついています。

BCH先物取引額chart

coinmarketcap.comより/2017年10月30日

ほぼ同時期にハードフォークを起こすBTG(ビットコインゴールド)と比べてもその差は圧倒的です。

BTG先物取引額chart

coinmarketcap.comより/2017年10月30日

この差は、ビットコインSegWit2xはBTGと違って、大手マイニングプールのサポートや取引所の取り扱いが決定していてハードフォークがほぼ確実に起こるからということが大きいでしょう。つまり、ビットコインSegWit2xはBCHやBTGに比べ現段階でかなりの信頼を集めているのです。

このような点から考えると、ビットコインSegWit2xが正式なBTCとして取り扱われるにせよアルトコインとして扱われるにせよ、BCHと同じようにかなり成長するのではないでしょうか。数多くあるアルトコインのうちの1つに投資するより、信頼あるビットコインの分岐で生じたコインを選ぶという投機家は多いでしょう。そういった点で、今後のビットコインSegWit2xの先物価格には要注意でしょう。

まとめ

簡潔に現在のビットコインSegWit2xの現状を整理すると、

  1. ノード数ではレガシービットコインの圧勝だが、マイニングプールではビットコインSegWit2xの圧勝
  2. 取引所はまだはっきりしないが、ビットコインSegWit2xのマイニングプール合計の演算能力がレガシービットコインのそれを超えると、取引所により正統なBTCとして扱われるビットコインの種類が異なってくる
  3. 分裂はほとんど確実に起こり、ある程度の価値をもつことが予想される。しかし、どちらが正統なBTCとして扱われるかはまだ不透明

といったところでしょう。

そして、先物取引の取引額を見た限りでは、現段階ではビットコインからハードフォークで生じた他のコインよりも信頼性が高いということはいえそうです。今後も変化を見守りましょう。

※追記(11月9日)
SegWit2x側が声明を発表し、「十分な支持を得られなかった」としてSegWit2xハードフォークは無期限の延期になりました。

 

この記事のタグ

関連記事

おすすめ記事