VISAとMastercard、リブラ協会へのコミットメントを再考中
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設立メンバーとしてリブラ協会(Libra Association)に参加した大手4社の決済会社が、暗号通貨リブラのプロジェクトに正式に契約するかどうかを決めかねているようです。
事情に詳しい情報筋によると、Visa、Mastercard、PayPalおよびStripeがリブラの組織憲章に正式に署名するかどうか未定、と言います。
彼らは、プロジェクトについて留保している規制当局との関係を良好に保ちたいという懸念があるようです。
決済会社の幹部によれば、Facebookは規制当局が寛容し得る範囲を越えてしまっているとしています。
さらに彼らは、Facebookが他の分野で責任をもってふるまっていないという見識をもっており、ユーザーデータやプライバシーの取り扱いについて懸念があるということです。
10月14日にリブラプロジェクト正式参加の再確認
リブラが公開される前にそれらの企業は、協会への参加を検討する為の同意書に署名しましたが、それは拘束力のないものでした。
今月後半には、リブラ協会が28の設立メンバーに対して、暗号通貨プロジェクトへのコミットメントを再確認することになっている模様です。
リブラプロジェクトを率いるDavid Marcusは、
「リブラ協会のメンバーにとって最初の波を迎え、数週間後には正式メンバーになります」とツイッターで述べています。
Felt like addressing this. 1) official 1st wave of Libra Association members will be formalized in the weeks to come; (continued) https://t.co/baZkFlGN9O
— David Marcus (@davidmarcus) October 1, 2019
(出典 https://twitter.com/davidmarcus/status/1179170843693182976?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1179170843693182976&ref_url=https%3A%2F%2Ffintide.jp%2Fofficial-1st-wave-of-libra-association-members%2F)
組織への参加を正式に署名することを控える可能性のあるパートナーがいることには気づいていなかったようですが、新しく世界通貨を構築することは困難で勇気のいることだと語りました。
「私たちは非常に冷静です。デジタル通貨の価値についての対話を最前線にもたらすことで、リブラが提起してきた規制関連の懸念について自信をもって取り組んでいます」と、彼は付け加えました。
この憲章に正式に参加する会社は、プロジェクトに投資するのに最初に必要な最低1000万ドル(10億6000万円)を即座に寄附する必要はないという事です。
支払いを延期するというこのオプションは、協会の戦略を反映しているとみる人もいます。
プロジェクトの進捗にゆっくりと時間をかけることで、他の参加者たちにとって、その運営や規制上の義務への対応を検討する時間を稼ぐことができると言います。
その憲章への署名は、10月14日にスイスで行われる可能性が高いようです。そこには、リブラデジタル通貨準備金とグローバル決済ネットワークを管理する非営利団体が本部を置きます。
リブラプロジェクトを推し進める
Stripeのスポークスマンは、憲章への署名を躊躇しているかどうかの明確なコメントを避けましたが、他の参加者と共に前向きに取り組んでいることを述べました。
Facebook、Visa、MastercardおよびPayPal、リブラ協会のスポークスマンはコメントを控えました。
リブラのメンバーを正式に署名させる動きは、世界中で政治家からの攻撃を受けた後でさえも、Facebookとそのパートナーが物議をかもす計画を推し進めようとしていることを示す最新のものです。
これまでFacebookは、リブラ協会が通貨に関する決定を担当すると繰り返し述べてきた為、その署名が正式にされれば、規制当局にとっては、Facebookが提供してきた内容よりもよい方向に進んでいるとみる可能性があります。
一部のヨーロッパの財務大臣は、各国でリブラを禁止すると脅しており、EUの独占禁止問題の責任者は、完全に独立した経済を作りかねないとして、リブラ排除への措置に踏み切ったと述べました。
一方、リブラを支える技術開発は内部の締め切りよりも速く進んでいると、暗号通貨を保護する技術会社Anchorageの共同設立者であるDiogo Monica は話します。
AnchorageとFacebookのデジタルウォレット子会社のCalibraを含むメンバー5社は、すでにノードのテストネットワークを稼働させており、今のところ実際のお金では処理されていないようですが、トランザクションをお互いに送信している、と彼は言います。
また、マネーロンダリング防止ポリシーなど技術やポリシーを微調整することで、規制当局の懸念に取り組み始めた、と彼は付け加えました。
そして、協会への参加希望リストにはまだまだ何百もの組織がいるものの、まだその後の追加メンバーは認められていないということです。
リブラは法規制に真摯に対応
リブラプロジェクトの反対者は、リブラが伝統的な通貨を貯蔵することによって支えられ、国家の金融政策を弱める可能性、あるいは、悪意のある目的に使われる可能性があると言います。
今年の夏、米国の議員はリブラプロジェクトの責任者David Marcusに対して、Facebookは金融サービスへ拡大する信頼に足るのかなど、質問攻めにしました。
CEOのMark Zackerbergは先月、上院議員に対して、米国の規制当局からの承認賛成がなければ、通貨はどこにも立ち上がらない、と話しました。
明確なローンチ予定を強行に実行するよりも、規制当局の納得がいくまで改善に努め、祝福されるローンチにしたいという意向のようです。
Facebookは6月に、国際的な決済をテキストメッセージ(メール)と同じくらい簡単にするプロジェクトを立ち上げました。
それには、eBay、Uber、ブロックチェーンのスタートアップCoinbaseとXapo、Vodafone、ベンチャーキャピタル企業や非営利団体など、決済、技術、通信、などブロックチェーン業界の大手企業を当てにしています。
Facebookが大衆の批判を浴びていたとしても、リブラ組織のメンバーはその後ろで働いて、憲章文書をまとめ、非営利団体を正式に設立していました。そのおかげで決済システムを立ち上げるグループの仕事を前進させることが出来ます。
リブラ協会のスポークスマンはメールで、以下の様に述べました。
「6月以来、協会では数多くの規制当局および政治家と会談をしました。さらに、設立メンバーのグループは定期的な会議を開催して決済システムを運用するために必要な規制要件やマネーロンダリング対策、テロ資金調達の根絶、プライバシーやその他の基準についても議論しました。」
今月の承認作業がどう進むのか、今後のプロジェクトの進捗に影響していくイベントに注目です。